PR

 米IBMのジニー・ロメッティ会長、社長兼CEO(最高経営責任者)は2017年3月21日(米国時間)、米ラスベガスで開催しているクラウドのイベント「IBM InterConnect 2017」の基調講演に登壇した。

米IBMのジニー・ロメッティ会長、社長兼CEO(最高経営責任者)
米IBMのジニー・ロメッティ会長、社長兼CEO(最高経営責任者)
(出所:米IBM)
[画像のクリックで拡大表示]

 ロメッティ氏は人工知能(AI)による「コグニティブ(認知)が企業の競争力になる時代が来る」と話した。IBMクラウドはAIを中心に「エンタープライズシステムを動かせる高性能でセキュアな基盤を作り、データファーストなアーキテクチャーを構築する」(同)という。

Watsonを業界ごとに学習済みで

 ロメッティ氏は「Watsonは業界ごとの知識を持っている」と話す。IBMのAI「Watson」を金融業や製造業といった業界に特化したデータを学習済みで提供し、学習にかかる手間を少なくする狙いだ。

 業界の知識を持ったWatsonが活躍した事例としてロメッティ氏が紹介したのが、確定申告の支援サービスを提供する米H&Rブロックだ。同社のビル・コブ社長兼CEOは「アメリカの税関連の文書を全て学習済みのWatsonをベースに、確定申告手続きを学習させた」と話した。

米H&Rブロックのビル・コブ社長兼CEO(最高経営責任者)
米H&Rブロックのビル・コブ社長兼CEO(最高経営責任者)
[画像のクリックで拡大表示]

 H&Rブロックは2016年6月からWatsonの採用を検討。2016年12月にプロアメリカンフットボールリーグの優勝決定戦「スーパーボウル」に、Watsonを使った確定申告支援サービスのテレビCMを流した。同大会はCM費が高額なことで知られている。

 H&RブロックのWatsonは「顧客にインタビューをして、自然言語の対話内容から税金が控除できそうな項目を推察する」(コブ氏)。Watsonの導入を隠して実施した試験導入では、顧客満足度が向上したという。コブ氏は「Watsonを使ったシステムを使って還付金を受け取る顧客の割合は、米国の平均を上回っている」と、Watsonの効果を語った。

BluemixでWatsonを組み込んだアプリ開発

 WatsonはAPI(アプリケーション・プログラミング・インタフェース)で提供するサービスなため、IBMクラウド以外からでも利用できる。IBMは「Bluemix」といったアプリケーションを開発・実行するPaaS(プラットフォーム・アズ・ア・サービス)をWatsonを使ってデータを活用するための基盤として位置付け、Watsonと一緒にクラウド基盤の拡販を狙っている。

 Bluemixの活用事例としてロメッティ氏が紹介したのは、カナダロイヤル銀行だ。同行のブルース・ロス テクノロジー&オペレーションズ担当グループヘッドは「BluemixとBluemix Local(オンプレミスにBluemixと同じ環境を構築するソフト)があったためIBMを選んだ。開発チームの生産性が劇的に上がった」と話す。

カナダロイヤル銀行のブルース・ロス テクノロジー&オペレーションズ担当グループヘッド
カナダロイヤル銀行のブルース・ロス テクノロジー&オペレーションズ担当グループヘッド
[画像のクリックで拡大表示]

 Watsonを組み込んだ新しいアプリケーションを開発する時、「迅速にアプリを構築してデータを蓄え、活用することが競争力になる」(ロメッティ氏)。そのため、ミドルウエアやWebサーバーを用意せずにアプリを開発し、自動でスケールできるPaaSを充実させることがクラウドの競争力になるとする。

 IBMがPaaSで競争優位性とするのが、オンプレミスにクラウドサービスと同様の環境を構築できることだ。「オンプレミスから出せないシステムやデータがある」(ロメッティ氏)と考えるIBMは、クラウドとオンプレミスで同じ環境が構築できるようにシステムを構築してきた。

 ロメッティ氏は「価値のあるデータは外に出さず、民主化しないものだ。データを分析して得られる洞察が、データを持っていた企業の競争力になる」と話した。米グーグルが「Google Cloud Next 2017」で、データやアルゴリズムを民主化すると発表したことを意識したとみられる発言だ。

 IBMは、企業はそれぞれが収集したデータでWatsonを使うものとする。ロメッティ氏はWatsonを活用して「データから素早く洞察を得られるかどうかが企業競争の勝敗を決める」と語った。同氏は、AIが学習対象とするデータは「20%が検索によって収集できるオープンなデータ。80%は企業が持つデータだ」と話した。

 ロメッティ氏はWatsonのほかにも注力技術として、ブロックチェーンと量子コンピュータを挙げた。ブロックチェーンは「インターネットと同じくらいのインパクトがある」(ロメッティ氏)とし、インターネット上の取引の基本技術と位置付けた。量子コンピュータは「人間が想像もできなかったような問題を解決できるユニークなサービスになる」(同)という。IBMは商用の量子コンピュータ「IBM Q」をクラウドサービスとして公開している。