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 昔働いていたオフィスのすぐそばに、本格的なインド料理店があった。とにかく羊肉のカレーが美味で、私の超お気に入り。週に1度は食べていたように記憶している。

 白状すると、この店にはちょっと「辛い」思い出がある。カレーの「からさ」で涙を流したわけではない。インド人の店員に、いつも英語がまったく通じない「つらさ」だ。

「ラムカレー、ください」

インド人の店員に英語がまったく通じないのは、カレーの「辛さ」よりも「辛い」思い出
インド人の店員に英語がまったく通じないのは、カレーの「辛さ」よりも「辛い」思い出
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 「ラムカレー、ください」——。たったそれだけなのに、“ラム”の発音が悪すぎるようで、必ず2度は聞き返される始末。結局しょうがないのでメニューに書かれている番号を指さして、「34番を」と言うしかない。曇った顔が一瞬で晴れて、「らんっぶぅ、くぁーれぃ、ね。おぅけぃ」と、インドなまりで答える店員のドヤ顔を見る度に、私は絶望的な気持ちになった。そして空虚な心を埋めるために、羊肉カレーに毎回がっついた。

 あれから11年。残念ながら、怠惰ゆえに私の英語力はそんなに成長していないのだが、心だけは踊っている。格段に便利な翻訳サービスが続々登場しつつあるからだ。第3次とも言われる人工知能(AI)ブームに加え、1960年代に産声を上げて地道に開発が進められてきた音声制御技術の急激な進化。二つの要素が絡み合って、“スゴイ”ことになっている。

 例えば米グーグルが提供する「Google翻訳」のスマートフォン(スマホ)アプリ。「ラムカレー、ください」と日本語で話しかければ、瞬時に翻訳してくれて流ちょうな機械音声としてスピーカーから英語が流れてくる。最近加わった新機能には、カメラで英語のメニューなどをかざすと、文字列の部分がリアルタイムに日本語へと変わっていくなんてものもある。