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 デビューから7年経ったが彼女たちはアルバムを2枚しか出していない。ただしセカンドアルバムは国内の通常盤、ファンクラブ向け限定盤、海外盤の3種類あり、それぞれ音の感触が異なる。このところの公演で最後に歌われることが多いTHE ONEという曲は3種類のバージョンがある。「THE ONEを組み合わせたメドレー音源を自分でつくり、日頃から聞いていたのですが、12月2日の最後、まさにその順番で歌われ、感動しました」。これが「色々思うところがあり感慨深かった」理由の一つである。

「プロジェクトリーダーは寝ないといけない」

 広島公演で叫んだIT企業の役員は情報企業の幹部と違って用意周到であった。広島市のホテルが満室だったため、岩国市のホテルを予約し、当日は早めにチェックイン、公演前に広島市内観光を済ませた。YUIMETALの不参加を知った彼は「泣きます」とつぶやいたが、公演終了後はこれまた事前に予約していた鉄板焼き屋で反省会を開き、「公演中ずっと叫んでいました」と反省の弁を述べた。反省会の終了が夜12時近くになったのは誤算だったが、それでも彼は広島駅までひた走り、最終電車に飛び乗り、儀式参列の疲れと反省会の酔いに耐え、目的の駅に降り立ち、ホテルに泊まった。ちなみに反省会とは公演後、ファンが集まって飲み食いをすることである。

 きっぱりと役員が述べた2018年の抱負は「BABYMETALの海外公演に行く。必ず必ず行く」というものであった。ロックの本場で演じる彼女らをどうしても見たいそうだ。彼は複数のプロジェクトの責任者で中には難航している案件もある。大事な時に洗礼の儀だとか反省会だとか海外に行くとか何をしているのか。こう言われそうだが、その指摘はいかがなものか。

 前に一度書いた気がするが、大手金融機関のベテランから「責任者には寝てもらわないといけません」と言われたことがあった。大きなシステム開発プロジェクトが大詰めを迎えたとき、責任者の担当役員はコンピュータセンターに詰め、現場を見守っていた。「寝てください」と当時の部下であったそのベテランが進言すると仮眠室に入るがしばらくすると出てきてしまう。システムを動かした直後、トラブルが起きた。担当役員のせいではなかったが、トラブルに対し、適切な判断を下せたとは言えなかったそうだ。なるほどプロジェクトリーダーは寝ないといけないし、しかるべき立場の人は休まなければならない。ストレスを解消し英気を養うためなら、休日に三種の神器を身に付け、90分間叫んだり、泣いたりしてもかまわないだろう。

 苦労はどんな仕事にもついて回る。それでも真剣に取り組むのは当然としても余裕を失ってしまうと本人にも周囲にも仕事にも悪い影響が出る。気分転換が必要だし、できるならば心奪われる時間を持ち、泣き叫んで頭と体に溜まった毒素を洗い流すとよい。ところでIT企業役員の言動をなぜ把握しているのか。筆者も洗礼の儀に三種の神器を身に付けて参列し、役員が主催した反省会に出たからである。ただ、幹部や役員と同様に大いに感動し、彼らほどではないが相応の仕事を抱えていたにも関わらず、泣きも叫びもしなかった。「私は泣いたことがない」と歌い出されるヒット曲が30年ほど前にあったが、当時からそういう性分なのである。

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 縷々述べてきたがもう一言書いて終わりたい。BABYMETALのバックでギターを弾いてこられた藤岡幹大さんが本年1月5日、急逝された。BABYMETALのバックバンドは神バンドと言い、小神様という愛称で呼ばれていた藤岡さんはまだ36歳という若さであった。広島公演が小神様としての最後のステージになってしまった。報道に接した情報企業の幹部は「言葉が出てきません。悲しいです。落ち込んできました」とメッセージを送ってきた。IT企業の役員は「小神様の訃報に悲しみに暮れております。神バンドの中で一番好きなアーティストでしたので」とメールを送ってきた。小神様は大空のどこかで楽しそうにギターを弾いているだろう。ご冥福をお祈りします。