PR

役職定年を理由に「退職」を迫るブラック企業も

 モチベーションの下がった役職定年者を社内に置くデメリットを解消するためか、違法同然の役職定年もIT業界にはまかり通っている。2017年3月31日付で役職定年で退職した元エンジニア・Aさん(仮名)に取材ができた。

 Aさんが勤務していたITベンダーには、部長以上の社員が53歳になると強制的に「辞表」を提出させられる役職定年があるという。退職強要に当たる可能性が高いが、Aさんは「会社の決まりだから仕方がない」と悔しさをにじませる。

 53歳で部長職だったAさんは2017年3月31日、約30年勤めた同社を退職した。まだまだやれる自信はあった。IT技術者として開発現場で鍛えられ、技術力とリーダーシップを発揮して着実に昇格していった。全社標準の整備にもかかわるなど、組織全体の技術力向上にも貢献した。にもかかわらず、「53歳」を理由に会社を去る羽目に。グループ会社への再就職を目指したが、面接官からは「稼げないエンジニアは不要」とバッサリ。結局、社外のベンチャー企業に転職した。

 このケースの問題は、役職定年と称して会社側が「辞表」の提出を求めたことだ。しかもAさんが出席した説明会では「○○○○○の都合により」と書かれた部分が、実際に配布された辞表のテンプレートには「一身上の都合により」となっていた。会社側が自己都合と主張するための対応と見られるが、前出・杉本氏は「事実だとしたら退職強要に当たる。違反、ブラックな状態だ」と指摘する。筆者はこの会社に事実確認を求めたが「ノーコメント」だった。

 もっとも、当のAさんは4月からの新たな出発を楽しみにしているようだ。「規模が小さい会社なので、いろんな挑戦ができる。やりたいことにどんどんチャレンジしたい」(Aさん)と前向きだ。筆者は間違いなく新しい会社でも活躍できると感じた一方、優秀な人材が流出していく企業の末路を危惧した。

 50代にとっては、まさに恐怖の役職定年だ。新たな活躍の場を自ら見つけられなければ、人生そのものの輝きを失いかねない。転職や起業、学生にまで転じるケースもある。会社側と次世代社員から総攻撃を受けている以上、会社側に高年齢層が活躍する場を求めるのは難しいかもしれない。

 ちなみに日本IBMには、役職定年がない。代わりにあるのは「早期定年」と呼ぶ制度だ。これは、勤続5年以上の50代を対象に、定年年齢を前倒しできるもの。これは一例だが、企業側は強制的に役職を外して給与ダウンしたり、退職を強引に迫ったりせず、これまで会社を支えてきたベテラン社員に敬意を払い、社内外を含めたキャリア形成を支援すべきではないだろうか。