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 結局PCメモはもう諦めて、その時々で心に刺さったペンとノートをとっかえひっかえしてすることにしている。ちなみに今使っているのは、中村印刷所という都内の小さな会社が作っているA5判方眼ノートと、三菱鉛筆のノック式証券細字用ボールペンのセット。前者は見開くと180度水平になって事実上A4判として使える点が素晴らしく、後者は書き始めのかすれが全くなく紙上を滑るような書き心地が気に入っている。

ノートPCメモ派は手書きメモ派より理解度低い?

ラクガキコーチのタムラカイ氏は数時間のイベントを数枚の絵にまとめるなどグラフィックスレコーディングの伝道師として活躍している
ラクガキコーチのタムラカイ氏は数時間のイベントを数枚の絵にまとめるなどグラフィックスレコーディングの伝道師として活躍している
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 そんなPCメモ派になり損なった筆者は、最近大いに勇気づけられた研究を知った。米プリンストン大学のパム・A・ミューラー氏とカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)のダニエル・M・オッペンハイマー氏が、学生がノートパソコンを使った学習のメリットとデメリットについて研究しているというものだ。

 両名によると、30分間の講義について、手書きでメモを取る学生と、ノートパソコンでメモを取る学生を比較したところ、手書きの方が講義の内容を深く理解し記憶も確かである傾向が強かったそうだ。理由は、ノートパソコンを使う学生は言い回しをただそのまま書き記す転写をしているのに対し、手書き派は耳に入った言葉をいったん自分で情報と処理して再構成しているためだという。

 もちろん、会議の記録をチームで共有するなどビジネス現場にはデジタルの方が適切なシーンも数多くあり、そこまでアナログにこだわって生産性を落とすつもりは毛頭ない。

 ただ、道具としてのパソコンやスマホに、業務や思考まで制約されて本末転倒ではないかと思う場面もあるような気がしている。例えば、誰かに何かを説明するための資料をパワーポイントを開いて頑張って作り込んだ割には、ツールに縛られて分かりにくくしてしまっていないだろうか。

 先日、著書「アイデアがどんどん生まれる ラクガキノート術」で知られるラクガキコーチのタムラカイさんにお目にかかる機会があった。2時間近いイベントを数枚の絵に凝縮していく様子は実に圧巻だった。

 終わった後に壁に貼られた絵を見ていると、イベントの重要なシーンがフラッシュバックし、スッキリと整理された形で脳に記憶として定着していく不思議な体験をした。誰かに何かを伝えるために心を込めて情報をかみ砕いた過程が、文字や絵の筆跡から伝わってきたからなのかもしれない。

 そういえば、ある大手企業で役員秘書をしていた友人が、こんなことを言っていた。「ハート型のピンク色のポストイットに美しい文字でリクエストを書いてデスクに貼っておけば、たいていの上司はすぐに動いてくれる」――。

 残念ながら、筆者がハート型のポストイットを使っても上司の心は動かせそうにない。ただ、心のこもった文字で、相手の心を揺さぶることなら真似できそうだ。オレンズネロを入手できる日はいつになるか分からないし、まずは美文字の練習本を買いにいこうと思う。新年度のスタートを機会に、PCメモ派のみなさんも一緒に手書きの世界を再発見してみてはいかがだろうか。