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 「梅雨は情報漏洩の季節なのかもしれない」と、1年ほど前に当コラムで書いた(関連記事:年金情報流出問題、次はあなた)。嫌な予感ほど当たるのだろうか。2016年6月14日にジェイティービー(JTB)が最大で約793万件の個人情報が流出した恐れがあると公表した。

 JTBは同日17時から国土交通省で記者会見を開き、冒頭で高橋広行社長が「お客様ならびに関係者のみなさまにご迷惑、ご心配をおかけしたことをお詫び申し上げます」と頭を下げた。記者は会見に出席し、約2時間にわたって取材した。

個人情報流出の可能性について記者会見するJTBの高橋広行社長(左から2番目)ら
個人情報流出の可能性について記者会見するJTBの高橋広行社長(左から2番目)ら
(6月14日、国土交通省)
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 取材結果は当日の「『流出事実ないがお客様にお詫びする』、793万人の情報流出可能性でJTBの高橋社長が謝罪」と翌日の「[詳報]JTBを襲った標的型攻撃」にまとめた。ここでは記者が取材中に感じた「がっかり」を書いていきたい。

5秒ルールに満たない謝罪

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 がっかりにつながる最初の違和感は、記者会見冒頭に感じた。高橋社長が下げた頭をさっとあげたからだ。記者はデジカメの連射モードで謝罪を撮影しており、写真のタイムスタンプを見ても頭を下げていたのは1秒程度だった。居並ぶ役員が頭を下げ続ける中、高橋社長はいち早く正面を向いていた。

 「謝罪は頭を下げてそのままきっかり5秒保つ」。日経ビジネス2015年12月7日号の特集「謝罪の流儀」で、リスク管理を専門とするPR代理店が企業に謝罪会見対応でそう教えると読んでいたいたこともあり、少々面食らった。頭を長く下げればいいというものではないかもしれない。793万件もの情報流出の疑いがあり、うち9154件はパスポート番号を含む(現在有効なものは約4300件)という内容の謝罪会見である。

 高橋社長は謝罪前に「現在のところ、流出の事実については判明していない。個人情報流出による被害を受けたという報告もない」と説明。「ひょっとすると高橋社長は『情報流出は無かった』と確信しているのかもしれない」。記者はそう感じた。