PR

「代理機関」も公的個人認証の利用を想定

 もっとも、民間企業が公的個人認証を通じたサービスの利便性向上によってビジネスを拡大するには、顧客となる国民に個人番号カードが十分に行きわたっていることが大前提になる。政府・与党は交付開始3カ月の2016年3月末時点で1000万枚、その3年後の2019年3月には国民の3分の2に当たる8700万枚の普及を計画しているが、現時点では“希望”に過ぎない。とはいえ、目標に向け多様な手を打とうとしている。

 例えば、2017年中にスマートフォンを個人番号カードのICチップリーダーとして使えるようにしたり、2019年中に公的個人認証の電子証明書をスマートフォンにダウンロードして利用できるようにすることを、日本再興戦略に盛り込んだ。公的個人認証を活用して、企業が個人番号カードをキャッシュカードやクレジットカード、各種ポイントカードとしても使えるようにする。

 また、個人番号カードの公的個人認証は、マイナンバー制度と別の分野でも利用が検討されている。産業競争力会議が提案して日本再興戦略や世界最先端IT国家創造宣言にも盛り込まれた「代理機関(仮称)」での本人認証である。

 代理機関とは、本人の同意・委託に基づいて個人の情報を収集・管理して、個人の情報活用を支援するほか、データを各種サービス機関に提供する役割を担う機関である。例えば、医療・健康情報を常時収集して、災害・救急時に本人の救命に活用するために医療機関に情報を提供したり、農業従事者が作業情報を登録しておき、データサイエンティストによるビッグデータ分析に基づく生産支援アドバイスを受けたりするようなサービスを想定している。医療・健康分野の想定事例は、「パーソナルヘルスレコード(PHR)」と呼ばれる取り組みに近い。

 政府は2016年の次期通常国会で「代理機関(仮称)」の法制化を目指すが、現時点で代理機関の運営を民間企業にも開放するのかどうかは不明である。それでも、個人番号カードによる公的個人認証の活用シーンの拡大につながることは期待できるだろう。

 マイナンバー制度導入を機に強化される公的個人認証サービスは、マイナンバーそのものとは無関係であるがゆえに、利用するうえでの制約が緩く、今後多くのビジネスチャンスを生み出していくはずである。