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マイナンバーを使わない活用シーンは急拡大へ

 マイナンバー制度は、現状では社会保障、税、災害対策の行政手続きを対象としている。ただし、マイナンバーカードには、12桁の数字列であるマイナンバーそのものは用いないで、カード所有者を認証する仕組みが備わっている。

 一つは「公的個人認証(JPKI)」であり、カードに内蔵されたICチップに記録された署名用電子証明書または利用者証明用電子証明書を使う。この仕組みを利用して、マイナンバーカードを健康保険証代わりに使えるようにする「医療保険のオンライン資格確認」が、2018年度から段階的に始まる。2020年には本格運用に移行する計画である。

 カード所有者を認証するもうひとつの仕組みは、ICチップの空き領域に独自の認証用アプリケーションとIDデータを書き込む方法である。すでに一部の省庁で国家公務員身分証としての利用が始まっており、6月には自治体で初めて徳島県が職員証として利用できるようにした。こうしたシステムを開発したNECは、自社内での入退室管理などにもマイナンバーカードを使えるようにするための総務大臣認定を取得した。

 マイナンバーそのものを使わないカード利用シーンは、ほかにもインターネットバンキングでのログイン認証、オンラインでのクレジット決済、興行の電子チケットなどで実証実験が進められている。政府は2020年の東京オリンピック・パラリンピックの入場チケットとしてマイナンバーカードを使えるようにする準備も進めている。利用者証明用電子証明書は、スマートフォンのSIMカードへのダウンロードの技術実証が進んでおり、2019年中にサービスが始まる見通しである。

 マイナンバーを使わないカード活用シーンは、今後2~3年で急速に広がることになる。

苦戦が見える預貯金口座へのマイナンバー付番

 一方、マイナンバーそのものの利用範囲の拡大について政府は、(1)戸籍事務、(2)旅券事務、(3)預貯金付番、(4)医療・介護・健康情報の管理・連携、(5)自動車検査登録事務等の5分野を重点分野として検討を進めてきている。たとえば医療・介護分野では、マイナンバーとは別物だがマイナンバーと連携が可能な「地域医療連携用ID(仮称)」によって、診療情報を医療機関間で共有できるようにする仕組みの構築が計画されている。

 新分野の中でより多くの人が関心を持つと考えられるのが、預貯金口座へのマイナンバー付番と、戸籍へのマイナンバー付番だろう。預貯金口座へのマイナンバー付番は、半年後の2018年1月から始まる。預金保険機構によるペイオフや、社会保障制度での税務調査や資力調査の際に、マイナンバーを使って口座を名寄せできるようにするのが目的である。

 ただ、金融機関は預貯金口座をマイナンバーで検索できるように管理する義務を負うが、預貯金者がマイナンバーを金融機関に告知する義務はない。銀行などは今後、預貯金者にマイナンバーの告知を求める通知を一斉に出すはずだが、苦戦するのは確実である。

 すでに証券口座では、開設時のマイナンバー告知が2016年1月に義務化されている。既設の口座も、2019年以降に売却代金や配当金の支払いを受けるまでにはマイナンバーを告知する必要がある。だが、既設口座のマイナンバー告知はなかなか進んでいないようだ。政府は預貯金口座へのマイナンバー付番開始後3年をめどに、「状況に応じて付番促進のための所要の措置を講じる」としているが、実効性のある措置を打ち出すには強力な政治の力が求められることになるだろう。