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 「これからはあらゆる産業領域で『破壊的(Disruptive)イノベーション』が発生する。破壊する側に回らなければ、あなたのビジネスは破壊されてしまう」――。最近、大手ITベンダーのイベントに参加する度に、このようなフレーズを聞かされる。

 このフレーズの後には決まって、「破壊されないためには、ビジネスのスピードを上げることが肝心。そのためには当社の製品を導入して云々」といったセリフが続く。あまりに同じ話が多いので、記者は最近この手の話を聞くと「無」の境地に到達するようになってきた。冷房が異常に強い米国のカンファレンス会場は夏でも真冬のような寒さなので、記者はいつでも遭難寸前だ。

 低機能で安価な新技術が高機能で高価格な既存技術を駆逐していくという「破壊的イノベーション」は、従来は主に技術の世界で起きていた。しかし今はあらゆる産業がデジタル化しているので、必然的にあらゆる産業領域で破壊的イノベーションが発生する。この理屈自体に、ケチをつけるつもりはない。

写真●破壊する側の代表格、米Uber TechnologiesのTravis Kalanick CEO(最高経営責任者)
写真●破壊する側の代表格、米Uber TechnologiesのTravis Kalanick CEO(最高経営責任者)
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 「破壊的」の例として必ず挙げられる「Uber X」も、実際のところ破壊的である(写真)。

 先日もサンフランシスコ市内で「Uber X」に乗ったのだが、運転手はサンフランシスコに来たばかりという大学生だった。土地勘の乏しい学生でも、スマートフォンのアプリケーションが提供するナビゲーション機能があればタクシー運転手が務まってしまう。

 しかも記者が乗っていたのは、相乗り制の「UberPool」だった。大学生が運転する「プリウス」に乗っていたのは当初は記者一人だったが、しばらくすると後から、記者と同じ方向に向かう中年男性が乗り込んできた。UberPoolはこのような相乗りになる代わりに、乗車料金が安価になるという仕組みだ。

 記者はこの時、サンフランシスコの中心部「SOMA」地区から、海沿いのカンファレンス会場「Fort Mason Center」まで4マイル(約6.5キロメートル)、時間にして20分ほど移動したが、料金は7ドル(約840円)だった。通常のタクシーであれば20ドルは優に超えるところだ。

画像認識のエンジニアが宿泊需要を予測するAirbnb

 記者が微妙な気持ちにならざるを得ないのは、「破壊するか、破壊されるか」とユーザー企業に迫る大手ITベンダーの製品を、破壊する側の米Uber Technologiesや米Airbnbなどが、全く採用していないからだ。