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 外資企業を選ぶ2つめの理由は「ダイバーシティ」だ。出身地や学歴、年齢、性別などによる差別が少ない。「事実、外資企業には高卒の優秀なITエンジニアが数多く在籍している」と別の技術者は話す。彼らは向上心があってハングリー精神も旺盛。常にスキルアップやキャリアアップを重ねており、語学力やITスキルは有名大学出身者を上回る場合が少なくないという。

 女性の活躍が目立つも特徴だろう。日本企業に比べて女性幹部が格段に多いように見える。「差別という無用なストレスがない分、のびのびと仕事ができる」と、ある外資系IT企業に勤める女性技術者は打ち明ける。

本を1冊買うのに承認が必要な日本企業

 上の2つの理由は想像がつくものかもしれない。だが個人的に意外だったのが3つめの理由だ。「アカウンタビリティー」である。

 アカウンタビリティーとは「説明責任」のこと。「ひと言でいえば、自由に本を買えること」――。かつて日本IBMやセールスフォース・ドットコムなどの外資系IT企業で活躍した、東京理科大学の関孝則教授はこう説明する。

 日本企業では本を1冊買うのにも上司の承認が必要なことを指す。場合によっては上司から不機嫌な態度をされたり、経費不足で断られたりする。関教授は「事前にきちんと説明責任を果たしておけば、ある程度の裁量が与えられるのが外資企業。本を1冊買うのに上司の顔色をうかがうような無駄なストレスが生じなくて済む」と話す。

 正当な評価、ダイバーシティ、アカウンタビリティーに共通するのは「ストレスフリー」かもしれない。風通しの悪さからくるストレスが無ければ、様々なチャレンジができる。変化の激しいIT業界では特にスピードを阻害する無駄なストレスが足かせになる。これを排除したいと思うITエンジニアが増えるのは当然といえそうだ。

 見逃せないのは、外資企業の採用スタイルである「縁故」が移籍組を増やしている点だ。日本企業には縁故に悪いイメージを持つ場合が多いが、外資企業では強く推奨している。しかも縁故する側、あるいはされる側と双方に、数十万~数百万円の「移籍金」が支払われる場合が多い。優秀で信頼できるITエンジニアが芋づる式に外資企業に流れていくシステムを作り出している。

大舞台での活躍が見たくなってきた

 では、日本のITエンジニアがどんどん外資企業に流出する事態をどう見るべきか。これはまさに、優秀なプロ野球選手のメジャー移籍をめぐるかつての議論に似ている。

 筆者は当初、技術者不足が叫ばれるなかでの外資企業への人材流出を憂慮していた。このままで日本のIT産業はどうなるのかと。しかしなぜ多くのITエンジニアが外資企業に移るのかを聞くうちに、その心配も解消された。外資企業を選ぶ必然性を理解すると、むしろ転職したほうが日本企業、それも日本のIT企業にとって良いのではないかと思えてきたのだ。

 おそらく優秀なITエンジニアがどんどん外資企業に移籍して活躍すれば、それが刺激あるいは外圧になって、日本企業の変革を促進するのではないだろうか。中には外資企業の経験者が、日本企業に転じて改革をリードするケースも増えるに違いない。これもまたプロ野球の構図と同じ。外資企業に行っても日本人なのだから、日本人として素直に応援したいと思う。