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 ある大手金融機関のIT部門の幹部に、長年なかなか聞く機会が無かった疑問をぶつけてみた。「金融サービスは情報システムの存在無しには、作ることも提供し続けることもできないのに、どうして金融機関の経営者はITにあまり関心が無いのですか」。その人の答えは極めてシンプルだった。「金融機関が文系の会社だからです」。

 つまり、こういうことだ。文系とは大学の法学部や経済学部の意味。金融機関ではそうした文系出身者の中で、営業などで大きな実績を残した人物が出世の階段を駆け上がり、経営トップになる。一方、IT部門は理系の人たちの職場であり、文系の人たちはIT部員のことを「専門家」や「技術職」などと呼ぶ。

 公式には口にしないが、文系の人たちは専門家、つまりIT部員を「格下」に見ている。IT部員もそのことを分かっている。「カネを稼がない奴が何をエラそうなことを言う」といった言葉を浴びせられることも度々。そして何よりも冷厳な事実は、IT部門出身者が経営トップにはなれないということだ。せいぜい執行役員システム部長。一見、CIO(最高情報責任者)のようだが、その上に文系の役員がIT担当として君臨する。

 さて、金融機関はITを核にした一種の“装置産業”なので、文系の経営者や経営陣もITの重要性は当然認識している。だが、システムについては大枠だけ把握するだけで、「細かいことは専門家に任せて」ということになる。身も蓋も無く言えば、次のようになる。「システムは格下の専門家の仕事。それを我々が知る必要は無い」。

 こうした文系出身のトップのマインドは、金融機関に限った話ではない。いわゆる「キャリア」と「ノンキャリア」に職員を峻別する官公庁では、その意識はさらに強い。他の産業でも大手を中心に多かれ少なかれ、そうした傾向がある。製造業で技術者や研究者が経営者になるような企業ですら、「ITのことは専門家に任せて」がまかり通っている。