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 今回筆者がモロッコで体験したのは、ホームならではの油断である。ホームという、自分たちの自由度が高い環境で、もしかすると本人も気がつかないうちに自分たちの考えを「標準」だと思い込んでしまう。

 ここで思い出すのは、いわゆる日本の「ガラパゴス」携帯電話端末である。日本市場での成功を目指し機能を改良し、一時は国内市場において機能面で最高の地位を得た。しかしそれゆえに海外市場のニーズを把握しきれず、スマートフォン時代に乗り遅れた。「NFC搭載のiPhone7は、ようやく日本のガラパゴスケータイに追いついた」という指摘もあるが、機械的な機能の話であり、社会実装という意味ではまったく異なる。

 最近の例では、ドイツで用いられる電子署名があるだろう。同国で良かれと思って定めた要求水準が、他国に比べて高過ぎるため、公平な競争を阻害すると指摘されるようだ。いずれも今回、筆者がモロッコで体験したケースとは逆のケースだが、「ホームとアウェーにギャップがある」という意味では同じだろう。

 ホームに特化して成功し、その利益でアウェーを攻略するのは、定石である。ただ、ホームとアウェーの両方で仕事をする時、両者で別々の価値観を持つと、最終的に「ダブルスタンダード」になりかねない。

 IoT(Internet of Things)やAI(人工知能)が台頭する時代に、こうしたICTにとっての古くて新しい問題が再び顕在化している。しかし「ワールドクラス」のビジネスは、おそらくその先にしか存在しない。その突破を目指すのか、あるいはあえて市場を絞り込むのか─。寝付けないバスの中で、そんなことをあてもなく考えていたのだが、その問題を解くためには、「市場と自分自身をよく知る」ということが、まずは必要条件のように思える。