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プランニングは建築づくりの根幹

――新国立競技場でも採用されているデザインビルド(DB)方式について、槇さんご自身の考えを聞かせてください。

 言いたいことが大きく2つあります。1つは、基本構想の重要性が認識されていないことです。建築の学校で最初に学ぶのはプランニングです。平面に加え、3次元的な空間構成が基本です。その後、設備や構造、まわりの環境との関係などを検討します。

 ところが多くのDBのプロポーザルでは、プランニングが大切だということを要項にうたっていません。建築の基本として大事なデザインプロセスに対するこの姿勢には、疑問を持たざるを得ません。

 2つ目は、参加する建築家がどういう役割を果たすかが明言されていない問題です。最近実施された「横浜市新庁舎」の総合評価では、竹中工務店と槇事務所の案が当選しました(契約上は竹中工務店・西松建設JV、槇事務所はデザイン監修者)。最初から槇事務所が意匠を、技術的な提案を竹中が担当し、二人三脚で設計を進めてきました。その結果が認められたと思います。

横浜市新庁舎のパース。横浜市庁舎の移転に当たり、同市がDBによる総合評価落札方式を採用。竹中工務店・西松建設JVが2015年11月に落札し、槇事務所はデザイン監修を行う(資料:槇総合計画事務所)
横浜市新庁舎のパース。横浜市庁舎の移転に当たり、同市がDBによる総合評価落札方式を採用。竹中工務店・西松建設JVが2015年11月に落札し、槇事務所はデザイン監修を行う(資料:槇総合計画事務所)
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 こうしたやり方ではなく、施工会社が大枠をつくって、「建築家にはお飾りをお願いします」というニュアンスのDBには、私は反対です。またDB方式では採点システムが採用されているようですが、そこでコスト、技術が重視され、先に述べたプランニング、意匠への気配りが少ないものには参加するつもりはありません。

――DBはいわば施工まで担保する方式ですが、通常の設計コンペで経験の少ない若手建築家の斬新な案が当選した場合、施工がスムーズに進まない可能性もあります。その辺のリスクを回避するにはどうすればいいでしょうか。

 コンペの場合、経験が浅い設計者が当選することがありますが、それはアイデアが選ばれたわけです。もし、プロジェクトを完遂するのに十分な技術や知識がないと審査員が判断するなら、技術力のある事務所や施工者とチームを組むことを促してもいいと思います。

 その場合、「アイデアを尊重したものをつくってください」と念を押し、審査で選んだアイデアを無視する結果にならないよう注意することが大切です。ただ、技術力に不安があるからといって、基本設計者と実施設計者を分けるというのはよくないですね。

 それに関連して、最近の公共建築では、基本構想をやった設計者が、次の実施設計プロポーザルに参加できないなどという、とんでもない仕組みがあります。それには全く賛成できません。建築家はだれもそれを良しとしていませんから。なぜそういうことになっているのかが理解できないですね。