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 以上の取り組みにより、製品の安全を確保するHACCPは、人間が全面に出る仕組み、つまり属人性を排除し、仕組みで衛生管理をするものだ。例えば、作業ごとに作業する部屋や場所を変える。業務によっては兼任を不可とする。業務のフローは一方通行にする。入退室や物品の持ち込みのルールを厳密にする。こうした事項を厳守する必要があった。

 従来は職人かたぎを良しとする風潮があったが、これからは許されない。そうなると、属人性を最大限生かすように設計された現行の情報システムでは対応はできなくなる。

 HACCPを取り入れる計画の段階で、情報システムの改修では追いつかず、新システムの構築が必要だと分かっていた。分かっていたのだが、施工業者選定、調理機器選定、工場レイアウト検討、HACCPの学習などに追われて手を付けることができなかった。

 そうこうするうちに工場を建築する土地を見つけて決め、施工業者を探し出し、調理機器も選び終えた。新工場の稼働予定時期まで1年を切ってしまった。

 慌てて古巣である情報システム部門のメンバーと新システムの検討を始めた。いまさらベンダーに業務内容を説明し、開発する時間はない。開発費も無さそうだった。

 「やるしかないか」

 現場にどっぷり浸かり、実務担当の業務屋として日々を過ごしていた私であったが、心の中に残っていたシステム屋魂に火がついた。

赤俊哉(せきとしや)
1964年生まれ。ソフトハウスでプログラマー、SEとして従事した後、サービス業の情報システム部門に転職。全社の業務改革、データ経営の推進、データモデリングとプロセスモデリングなどに従事し、現在はIT戦略の策定を担当。現場の視点にこだわりつつ、上流工程におけるコミュニケーションのあり方を追求している。2016年3月、『ユーザー要求を正しく実装へつなぐ システム設計のセオリー』(リックテレコム)を出版。