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 とはいえ、過信は禁物である。業務分析結果を踏まえ、新業務と新システムを設計していく際、エンドユーザー寄りの考えに引っ張られないように心がけた。

 前述した通り、新システムは業務改革を伴う。私自身も「エンドユーザー」だったから、現場の考えが痛いほど分かったのだが、新業務の「あるべき姿」を描くに当たっては、現場の考えや現状を追認せず、否定しなければならないことが多々あった。現場から収集した情報は参考にとどめ、業務パターンの漏れを確認するために使用した。

あらゆる部署の伝票と資料をかき集める

 業務の流れは分かっていても、システムを作るには業務で使われているデータを洗い出し、整理しなければならない。そこで数カ月分の手書き伝票と作成資料を収集し、業務に必要なデータ項目を抽出していった。

 工場の業務に関わるあらゆる部署の伝票と資料を今回は徹底して集めた。それだけに結構、苦労した。当然あるべき伝票がなかったり、あっても醤油まみれで解読不能だったり、担当者が走り書きしたメモのような資料だったりした。部署ごとに資料のフォーマットが決まっておらず、ばらばらのメモが出てきたわけだ。

 数年前に基幹系システムを再構築した際にも、伝票や資料は集めていた。ところが、今回収集した伝票や資料をよく見ると、数年前は表に出てこなかったものが結構あった。現場の担当者に「なぜ前回、出してこなかったのか」と聞くと次の答えが返ってきた。

 「システムがどうのこうのと訳が分からないことばかり言われたので面倒臭くなった」

 「システムが導入されても、今まで通りのやり方でやってしまえばいいと思った」

 こう言われ、私は反省せざるを得なかった。基幹システム開発プロジェクトのリーダー兼開発者をしていたとき、私なりに尽力したつもりであった。だが、今回の開発対象となった工場を中心とする飲食系サブシステムについては部下、現場、ITベンダーといった各担当者に任せてしまったところがあった。各担当者は奮闘してくれたのだが、結果として、実際に使われていた伝票や資料を把握しきれなかった。

 時間の制約があったにせよ、もう少し私が現場に入りこんでいれば、もっと業務に密着した良い仕組みを作れたかもしれない。こう気づいた時、思わず唇を強くかんだ。そのときに感じた苦い味を昨日のことのように覚えている。

 とはいえ、失敗は過去の話だ。当時できなかったことを今になって悔いても仕方がない。気を取り直して前を向き、工場の新システムに注力することにした。

業務フローは現場とのコミュニケーションツール

 集めた伝票と資料の項目を分類すべく、当時の現場で私の片腕として働いてくれていた部下数人と一緒に、伝票と資料を分類し、色分けしていった。伝票や資料に記載されているデータごとに、発生タイミングを調べ、色分けした。情報システムから出力されたデータなのか、さらに別途加工したデータなのかも調べ、これも色分けした。

 大量の手書き伝票を含む資料のそれぞれが色とりどりにマーキングされていった。最初から全てを正しく分類できた訳ではない。分からないところは現場に伝票を持っていき、確認していった。