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「当たり前」を実現する非凡さ

 戸井のように地域に密着して活動する設計者にとって、過去の建て主の評判は命綱だ。例えばクレーム対応を一歩誤るだけで、その評判はインターネットを通して瞬く間に広がる。

 その点、戸井には過去の建て主をサポーターとして取り込み、その口コミによって新たな顧客を獲得する好循環が生まれている。

 戸井のどこがすごいのか。過去の建て主が異口同音に指摘するのが「聞き上手であること」だ。決して口が達者なタイプではない。それほど口数が多いタイプでもない。しかし、相手の話に耳を傾け、意図するところを的確につかむのがうまい。

 顧客の一人である杉浦聡一郎は、次のように話す。「こちらは素人だから、建材の名前など知らない。『重厚な玄関』といった曖昧な表現しかできない。しかし戸井氏は、いろいろと質問を重ねて、こちらの望んでいた建物を設計してくれた」

 前出の藤崎も、「最初の見積もりで予算オーバーした分、コストダウンをお願いしたが、その制約の中でも、きちんと私のイメージ通りのものを考えてくれた」と喜びを隠さない。

 「実を言うと、夏は暑いし、冬は寒い」。藤崎はこう打ち明ける。しかし、「こちらの意図を汲んでくれた結果だから、不満はない。望んだ通りの家に帰宅するだけでうれしくなる」と言う。

 「とにかくレスポンスが早い」。こう語るのは、美容室「ナンブウエスト」のオーナーで、その設計を依頼した南部陽だ。「要望を伝えてから、1~2週間で設計提案が送られてきた。このスピード感が気に入った。付き合いのある建築家で、こんなに素早く、的確に提案してくれる人を他に知らない」

 どれも職業人として当たり前のことだが、なかなかできることではない。そんな「当たり前」を普通にできることが、戸井の非凡なところかもしれない。(本文、敬称略)

トイットデザインが設計した美容室「ナンブウエスト」(石川県野々市町、2003年竣工)。オーナーの南部陽は、戸井が内装を設計したバーを見て、設計を依頼した(写真:トイットデザイン)
トイットデザインが設計した美容室「ナンブウエスト」(石川県野々市町、2003年竣工)。オーナーの南部陽は、戸井が内装を設計したバーを見て、設計を依頼した(写真:トイットデザイン)
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