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ゲーム&ウォッチがヒット商品に

 ゲーム&ウォッチは、もともと時計機能を入れる予定ではなかった。A、B、Cと三つのボタンを用意し、3種類のゲームを入れることを予定していた(図2)。当初の名称は「マイクロゲーム」だった。最終的には、三つのボタンのうちCボタンが時計に変わり、ゲーム機の名前も「ゲーム&ウォッチ」にした。

図2 ゲーム&ウォッチの回路図
図2 ゲーム&ウォッチの回路図
時計機能を入れることを決める前の回路図。ゲーム・セレク卜のスイッチで3種類のゲームを選べるようになっている。岡田智が描いた図。
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 時計機能を入れることになった理由は、いくつかある。ボタンC用に用意していたゲームが面白くなかったことが一つである。時計機能を付けておいた方が、大人がゲーム&ウォッチを買うときに、「必ずしもゲーム機を買うのではない」いう言い訳ができるため買いやすいという読みもあった。

 加えて、時計機能を追加しでも、コストの増加がほとんどなかったことである。実は、これが最大の理由だったようだ。

 当時の電卓用マイコンには時計機能が付いていた。当然、ゲーム&ウォッチに採用したマイコンにも付いていた。ちなみに、ゲームボーイのマイコンには時計機能が付いていない。「時計1個の値段が、安い製品でも数千円した時代である。5800円のゲーム機のなかに時計も入っていれば、販売の大きな武器になると考えた」(横井)。

 そこで、ゲームの得点表示と時計の時刻表示に同じ数字を使うことにした。この特許を取得している。この結果、競合他社は時計機能付きのマイコンを使っていても、画面上に時刻を表示できない。事実、時計付きの製品は出てこなかった。

 ゲーム&ウォッチの販売に踏み切るに当たり、社長から出ていた指示は、製品を3種類用意することだった。「続いて作ったゲームはボール・ゲームほど面白いものではなかった。しかし、結果的には、3種類の製品を用意することで、製品群として非常に大きな力となった」(横井)。市場には3種類の製品を一挙に投入した。あとからさらに2機種を追加した。これがゲーム&ウォッチの第一弾として登場した「シルバー・シリーズ」である。