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クイック・ディスクを探し出す

 ハドソンの構想に刺激を受けた上村雅之(敬称略、以下同)と開発第二部のスタッフは、さっそくICカード・システムの開発に取りかかった。ところがすぐに方向転換することになる。RAMを搭載したICカードは高価なこと、特許料をICカード・メーカに支払う必要があることなどがネックになったという。

図2 書き込み装置を販売店に配置する
図2 書き込み装置を販売店に配置する
ディスクシステム発売と同時に全国3000力所以上に設置した。
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 書き換えができればICカードでなくてもいい。開き直った上村が探し当てたのがミツミ電機のクイック・ディスクだった。クイック・ディスクはフロッピー・ディスクの一種である。当時、家庭用パソコンのMSXに採用されていた。

 記録容量は両面で約112Kバイトだった。当時のマスクROMカートリッジの容量は32Kバイト程度。クイック・ディスクは、片面にすっぽりソフトが格納できる大容量媒体と上村の目には映った。

 クイック・ディスクは通常のフロッピー・ディスクと異なり、渦巻状に一括してデータを読み書きする。部分的にデータを書き換えるときでも、記録領域をすべて磁気ヘッドでなぞる。テープ・レコーダ用ヘッドを流用でき、駆動装置のコストを抑えられることも特徴である。ただし、データの書き込みや読み出 しには8秒程度と時間がかかった。

 製品コンセプトはICカードをディスクに置き換えることであっさり固まった。駆動装置の価格はファミコン本体と同程度の1万5000円とする。ソフトはパズル・ゲームや連続ドラマ仕立ての手軽な内容にする。ディスクごとソフトを購入する場合の価格は2500円、ディスクを持ってきてソフトを書き換える料金は500円。カード・ライタの代わりにディスク・ライタを全国の販売店に設置するというものだった(図2)。

新しい音源をアダプタに搭載

 ディスクシステムは、駆動装置をファミコン本体の下に置き、ROMカートリッジのコネクタにアダプタを接続して利用する。

 アダプタには、ディスクに書き込むデータの変復調回路や、ゲーム・プログラムやキャラクタを格納するバッファRAM、そして新たに開発した音源チップを搭載した。

 ソフト供給媒体をディスクに置き換えるだけならば音源に手をつける必要はなかった。当時、32KバイトのマスクROMカートリッジでは、画像データやプログラムを格納するだけで一杯になり、音楽に割り当てられるのは数百バイト足らずだった。

 ディスクは容量が大きく、音楽にも数十Kバイト割り当てることができる。音源を強化したのは、それまでゲームの付属物としてしか見られなかった音楽に新しい価値を与えようとする試みだった。こうした考えは、のちにソニーと共同開発したスーパーファミコン用音源チップの設計にも生かせたという。