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 2016年1月に始まるマイナンバー制度の実運用に向けて、企業・組織の対応はどれだけ進んでいるか。どの部門が対応するのか。情報システムへの影響はどうか。誰に相談するのか――。企業・組織から1000件強の回答を集めた大規模な調査を通じて、日本企業におけるマイナンバー対応の状況を4回にわたって浮き彫りにする。第2回となる今回は、マイナンバーに対応する部門、および具体的な作業の取り組み状況をみていく。

 企業・組織のどの部門が、マイナンバー制度に対応するのか――。「企業・組織におけるマイナンバー対応に関する実態調査」(調査概要は記事末に掲載)では、8つの選択肢を挙げて、マイナンバー対応作業の実施・実施予定・実施想定層618件に、「関連する部門」をいくつでも、「主管する部門」をひとつだけ回答してもらった。この結果、マイナンバー制度対応の主役は、情報システム部門というよりは、総務部門や人事部門であることが分かった(図1)。

図1●企業・組織においてマイナンバー制度に対応する部門(n=618)
図1●企業・組織においてマイナンバー制度に対応する部門(n=618)
マイナンバー対応の実施・実施予定・実施想定者ベース。主管する部署は「ひとつだけ」の回答を呼びかけたが、複数の回答も可能としたため、合計は100%を超える
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 マイナンバー制度対応に関連する部門は、(1)総務部門が63.8%、(2)人事部門が59.7%、(3)情報システム部門が49.7%、(4)財務・経理部門が45.0%で、この4つが高い。とりわけ1位・2位の総務・人事部門は6割前後で、3・4位を引き離している。これと同様に、マイナンバー制度対応を主管する部門は、(1)総務部門が35.6%、(2)人事部門が32.0%で抜きんでて高く、他の選択肢は情報システム部門を含めて1桁~1割程度にとどまった。なお、主管する部門は一つだけの回答を依頼したが、複数の選択肢を回答した場合があるため、合計は100%を超えている。

 制度対応を主管する部門の3位以下は、(3)経営企画部門(10.8%)、(4) 法務・コンプライアンス・リスク管理・個人情報管理部門(8.6%)、(5)財務・経理部門(7.9%)、(6)情報システム部門(7.8%)である。情報システム部門は「関連する部門」では3位と上位にあったが、「主管する部門」では6位に下がり、下げ幅も41.9ポイントと、9つの選択肢で最大である。

 大まかに言えば、情報システム部門は、複数の部門が関連するマイナンバー制度対応プロジェクトにおいて、全体を取りまとめるスタッフ部門(総務・人事部門など)と協議し、支援する役割を担っていると言えそうだ。逆に、ITベンダーなど、マイナンバー制度対応サービスを提供する事業者にとっては、情報システム部門だけへのアプローチでは不十分かもしれない。制度対応の主役となる総務・人事部門とコンタクトできる事業者、例えば、人事業務パッケージやERP、複合機、電話機の関連事業者などは、マイナンバー制度対応を業務面で提案する機会を作りやすいとも言える。

 ちなみに、この設問における回答者の所属部門の構成比は、情報システム部門(34.9%)、総務・法務・経理・人事部門(31.9%)、経営系部門(26.2%)、その他の部門(7.0%)の順である。情報システム部門が少ないわけではない。

制度対応の具体的な実務の遅れは深刻

 マイナンバー制度への対応で必要になる主な作業に関して、具体的に11項目を挙げて、その取り組み状況について、マイナンバー対応作業の実施・実施予定・実施想定層618件に尋ねたところ、「実施中または完了」(実施層)は項目により2%台~25%台となった(図2)。

図2●マイナンバー制度対応作業への取り組み状況(n=618)
図2●マイナンバー制度対応作業への取り組み状況(n=618)
マイナンバー対応の実施・実施予定・実施想定者ベース
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 作業項目を提示しないで「マイナンバー対応作業の実施状況」を尋ねた場合、実施層は1058件の有効票の16.8%だったことは、連載第1回で紹介した。実施・実施予定・実施想定層の618件を母数とすると、実施層は28.8%であった。この28.8%と比べると、具体的な作業の取り組みの実施率(2%台~25%台)は決して高くはない。

 具体的な取り組みの実施層の比率が1割を超えるのは、11項目のうち4項目ある。その4項目とは、(1)主管部門の決定(25.4%)、(2)対応を要することの経営・組織トップへの説明(17.2%)、(3)対応・推進する事務局の設置(13.4%)、(4)対象業務、関連する帳票(法定の調書など)の洗い出し(10.5%)--である。上位3項目は、マイナンバー対応プロジェクトを設置するうえでの初歩的な作業であり、この初歩的な作業の実施率が13%台~25%台にとどまっている。

 従業員数が「1~99人」の小規模な法人での具体的な取り組みの実施率は、(1)「主管部門の決定」が12.8%、(2)経営トップへの説明が8.7%、(3)事務局の設置が4.7%と低い水準にある。小規模な法人では、初歩的な作業でさえ、まだ始まっていない。小規模な法人への制度の啓発や、取り組みの働きかけは急務である。

 初歩的な作業ではなく、制度対応の具体的な実務について見ると、実施層は、「業務、帳票の洗い出し」(10.5%)が最も高く、「社内規定・マニュアルの見直し」、「情報システムの改変」など多くの実務は5~6%台にとどまる。「取り組み状況が分からない」とする回答が3割程度あるのを考慮しても、対応作業の遅れは深刻と言わざるを得ない。

 続く第3回では、マイナンバー対応の相談相手をみていく。

【マイナンバー実態調査2015】(1)小規模な企業・組織で目立つ対応作業の遅れ

 「企業・組織におけるマイナンバー対応に関する実態調査」は、日経BPコンサルティングの調査モニターを対象として、Webアンケート調査で実施した。対象者は、企業の経営系部門、情報システム部門、総務・経理・人事部門などマイナンバー対応の取り組みが想定される部門の所属者であり、有効回収数は1058件。

 調査期間は2015年3月25日~3月28日。調査は日経BP社日経コンピュータ編集部と日経BPコンサルティングが企画を、日経BPコンサルティングが実査・集計と報告書作成を担当した。同調査に関する報告書は、日経BPコンサルティングが販売中。報告書の抄録版(無償)は2015年6月30日までダウンロード可能