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2.マイナンバーをどこでどう利用するか

(1)利用範囲が限られている
 次に、マイナンバーをどこでどのように利用するかを明らかにしよう。マイナンバーは、法律で利用範囲が限定されている(マイナンバー法9条)。一般企業であれば、(1)法定調書の作成という税務手続きと、(2)雇用保険手続き、健康保険手続き等の社会保障手続きにしか利用することができない。この点は、非常に重要である。個人情報保護法では、個人情報の利用範囲に限定はなく、「個人情報は〇〇手続きにしか利用できない」ということはない。これに対し、マイナンバーは利用できる範囲が、法律で厳格に定まっているのである。

 社員などのマイナンバーを保有・管理しているからといって、この範囲を超えてマイナンバーを利用することはできない。例えば、社員管理にマイナンバーを使うことはできない。難波舞さんの人事査定管理、研修受講履歴管理、昇給管理などにマイナンバーを利用してはいけないし、マイナンバーを社員IDとして使用してもいけない。

 では、なぜこのような規制があるのだろうか。それは、マイナンバーの“索引性”による。マイナンバーは数字の羅列であり、それ単体で知られたくない個人情報が分かってしまうわけではない。しかしマイナンバーは、「索引情報」や「キー」としての意義を持つ。その中身自体よりも、様々な個人情報を抽出・集約できる「索引情報」「キー」として価値がある。この価値があるからこそ、行政効率化、不正の是正、給付の充実、プッシュ型行政などが可能になる。しかしこの価値を悪用されてしまうと、マイナンバーさえ分かれば個人のさまざま情報を抽出・検索できてしまう恐れがある。

 そこでマイナンバーが正しく効果を発揮し、悪用されることがないよう、マイナンバー法では、マイナンバーで検索できる情報を限定している。これによって、マイナンバーによって分かる情報の範囲を狭め、ある意味でマイナンバーの価値を下げている。

 A社が、難波舞さんのマイナンバーを使って、難波舞さんの収入、扶養親族等の状況(これらは税務手続き・社会保障手続きのために必要)のほかに、これまでの人事査定情報、研修受講履歴、セクハラの訴え、労働組合での活動、資格取得状況などを管理してしまうと、マイナンバーを基にこれらの情報が検索できてしまう。A社が金融グループであったとして、さらに難波舞さんが同グループ内で保有している預金や株式、保険契約などを管理してしまえば、難波舞さんに関するさまざまな情報をマイナンバーで管理・検索することができてしまう。

 こうした取り扱い自体が、プライバシー権の侵害に当たり得る。さらに、万が一、外部に漏えいした場合には、難波舞さんがどういう人でどういう状況にあるのかが、他人に分かってしまうことになる。加えて、別の会社が持つ難波舞さんの情報、例えば信用情報、購買履歴、電車の乗り降りの記録などを、難波舞さんのマイナンバーで集約することもできてしまう。

 このような事態を防ぐため、マイナンバーは利用範囲が限定されているのである。これは重要な規制なので、マイナンバーを利用するときは十分に注意しなければならない。