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 このように、マイナンバー制度の運用開始当初、利用可能な範囲は社会保障分野、税分野、防災分野――の3つの分野に制限されており、その点について政府は「小さく産んで大きく育てる」というスタンスをとっている。将来の利用範囲拡大については「社会保障・税番号大綱」のなかで、「将来的に幅広い行政分野や、国民が自らの意思で同意した場合に限定して民間のサービス等に活用する場面においても情報連携が可能となるようセキュリティに配慮しつつシステム設計を行うものとする」としていたが、それを個人番号法附則第6条で、施行(つまり本年10月)後3年をめどに利用範囲を見直すとした。そして、本年9月には個人番号法が改正され、実際に利用範囲が拡大されることになった。

 今回の改正による利用拡大の対象は、(1)預貯金口座へのマイナンバー付番、(2)医療等分野における利用範囲の拡充、(3)地方公共団体の要望を踏まえた利用範囲の拡充、とされている。

 (1)については、主に税務調査の効率化が目的ではあるものの、災害時の資産確保や支援金受給への備えといった国民の側のメリットを踏まえ、当初は希望者のみを対象とし、ゆくゆくは義務化される予定だ。

 (2)については、健康保険組合等による特定健康診査情報や予防接種履歴の管理にマイナンバーを使う。個人の生命・身体・健康等に関わる情報を対象にしている訳ではなく、それについては「医療等ID」と呼ばれる別の番号制度として、検討が進められている。

 (3)については、地方公共団体が条例により独自にマイナンバーを利用する場合(ただし、あくまでも前述の3つの分野についてのみ)においても、情報提供ネットワークを使った情報連携を可能にするなどである。

 さらに政府は、2014年6月の「世界最先端IT国家創造宣言」の中で、戸籍事務、旅券事務、自動車検査登録事務への利用拡大についても言及しており、その検討も進められている。ただし、その一方では、今年5月に日本年金機構の個人情報流出事件が発生したことから、来年1月に予定していた個人番号と基礎年金番号の連結を、最長で1年5ヶ月延期することになった。

 このようにして、マイナンバーの利用範囲は拡大されつつあるものの、あくまでも主に行政事務の効率化を目的としたものであり、将来、仮に民間ビジネスでも活用が可能になるとしたら、どのような条件のもとで、どのような使われ方がされるべきか、問題は山積している。

本稿は『マイナンバーがやってくる 改訂版~共通番号制度の実務インパクトと対応策』(日経BP社、2013年)の第1章を再構成・加筆したものです。