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 商品販促などの目的で動画配信を始めたいというニーズが高まっている。しかし企業情報システムを担当してきたITエンジニアにとって、動画配信の土地勘は乏しいもの。何をどうすればよいのか分からない、というケースも少なくないようだ。

 AWSは2017年末から動画配信に関する統合的な機能を提供するマネージドサービス「AWS Media Services」を一般提供している。AWS Media Servicesを使えば、動画配信システムの構築経験がないITエンジニアでも、比較的容易にシステムを構築できる。

 本稿では、動画配信システムの構築経験が無いITエンジニアを対象に、AWS Media Servicesの解説と検証を行う。

 一般的なユーザー企業における動画配信の典型的なニーズとして、下記の要件を設定する。

■動画配信システムの要件

  • 約10分、計30本の商品動画を自社サイトから配信
  • 商品動画は作成済み(MP4:H.264/AAC)
  • 配信対象はスマートフォンとPC
  • 動画管理のCMSなどは検討しない
  • 初期投資を抑える
  • AWS上に動画配信システムを構築する

 以下では、これらの要件を満たす動画配信システムを構築する、というユースケースで話を進める。

 上記の要件を満たす動画配信システムの方式は、AWSでは大きく二つある。簡易な「プログレッシブダウンロード」と、現在主流となっている「ストリーミング配信」である。順に見ていこう。

 プログレッシブダウンロードは、動画ファイルをそのままオブジェクトストレージのAmazon S3にアップロードして公開する、というシンプルな方式だ。

 Webサーバーにおいて、S3にアップロードした動画ファイルのリンクをHTML5のVideoタグとして埋め込む。これだけで、スマートフォンとPCのWebブラウザーの両方に対して動画配信できる。コストは基本的にS3の料金だけだ。

 ただし実際の配信形態はHTTPダウンロードであり、動画の再生品質がネットワークの状態に左右される。企業側が十分なネットワーク帯域を確保していたとしても、ユーザー側のネットワーク帯域が不十分な場合や不安定なモバイルネットワークを利用した場合、スムーズに再生されないことが懸念される。

 現在の主流となっているのが、HTTPをベースにしたストリーミング配信だ。代表的な仕様として、米AppleのHLS(HTTP Live Streaming)、国際標準規格のMPEG-DASH(Dynamic Adaptive Streaming over HTTP、以下DASHと略す)のほか、米MicrosoftのSmooth Streaming、米AdobeのHDS(HTTP Dynamic Streaming)などがある。

 これらはいずれも「Adaptive Bitrate(ABR)」と呼ぶ機能を有している。動画ごとに異なるビットレートのファイルを用意しておくことで、配信側と視聴側のネットワーク状況や視聴側端末のCPUなどに応じて、配信/取得するビットレートを動的に切り換える仕組みだ。

 ビットレートの動的切り換えを実現するには、ソースの動画ファイルから複数のビットレートのストリーミング形式ファイルを生成する必要があり、プログレッシブダウンロードより手間が掛かる。視聴側についても、VideoタグにストリーミングURLを埋めるだけでは全てのOS・ブラウザーに対応できない。そのため、HTML5対応のJavaScriptベースのメディアプレイヤーを用意する手間も生じる。

 AWS Media Servicesを使うと、これらの手間を大きく軽減できる。

 シンプルなプログレッシブダウンロードと、ビットレートを動的に調整できるストリーミング配信には一長一短があるが、AWS Media Servicesが登場したことで、多くのケースでストリーミング配信が推奨されるようになった。