横河電機
IAシステム事業部
オープンソリューションセンター
MKリーダー
比田井 徹夫
  比田井 徹夫氏

 我々は,IPv6のメリット,キラー・アプリケーションを議論する段階は終了したと考えている。すでにインフラは整いつつあり,IPv6の普及(アプリケーション拡大)には,フィールドの情報を上げ,活用して制御する機器,フィールドのことを知り最適なシステムを提案・構築できるインテグレータが不可欠になっているのだ。

 NETWORLD+INTEROP 2004 TOKYO(N+I)で当社が公開した「踏切監視」実証実験が代表的な例である。西日本旅客鉄道(JR西日本)技術部はすでに鉄道沿線に100kmを越えるIPv6ネットワークを敷設している。N+Iの期間中,同社の協力を得て兵庫県宝塚市の踏切付近に,当社が開発したIPv6対応汎用コントローラ「Xancia(ザンシア)」を設置し,列車の通過信号を接点インタフェースで受けて,列車の進行方向および踏切の状態を,500km離れたN+I展示会場でモニタする実験を行った。

 Xanciaとは,世界で初めて「IPv6 Ready Logo Phase-1」を取得した汎用コントローラである。コントローラとしての高信頼性を維持しながら,パソコンに近いIPネットワーク機能,マルチメディア機能を搭載している。また,屋外設置,車載を意識した耐環境性を備えている。

 ロゴ取得に際しては,TAHIプロジェクト,KAMEプロジェクト,IPv6普及・高度化推進協議会の運営に携わっている社内情報部門の全面的なバックアップがあった。それだけではない。XanciaのOSはWindows CE.NET 4.2だ。マイクロソフト社と密に開発を進めることができ,非常に短期間にロゴを取得できた。マイクロソフト社がIPv6および「Ready Logo Program」を重要視しているため,積極的に対応してもらったと考えている。

 N+Iで紹介したもう1つのXancia導入事例は,ビルの空調制御である。ビル名はまだ明かせないが2004年度中に完成するインテリジェント・ビルに130台を越えるXanciaを納入した。従来のビル設備管理システムは,メーカごとの特殊なプロトコルによる縦割りシステムで構成されており,オープン性,拡張性などに課題があった。

 このビルではIPv6を導入したことにより極めてシンプルなネットワーク構成となった。Webサービスとの組み合わせでオープンで柔軟なシステムを構築できる。マルチベンダ,設備・ビルの増減や設備間の連係が容易でTCO削減に大きく貢献することだろう。また,ビルで働いている人がOAエリアのPCやモバイル環境から,コントローラ(Xancia)へブラウザで直接アクセスし,環境を細かく調節する個別設定サービスも容易に提供できる。TCO削減がIPv6採用の最大の動機づけになったのである。

 IPv6活用でTCO削減とともに新付加価値創造ができるであろうケースはほかにも数多く考えられる。そのキーワードとなるのは,移動体,多数・多地点,統廃合,広域だ。すべての機器がネットワークに接続し,機器間やサーバーとのデータ連係により,高付加価値の無人・省人サービスを展開するようになったのである。具体的には,

  • インテリジェント自販機や駐車場料金清算機などでの非接触ICカードによる電子決済や会員サービス
  • チェーン店の店舗内設備の監視・制御・予知保全
  • RFIDを活用したトレーサビリティ,セキュリティ管理
  • 消防車などの特殊車両の装置制御と車両間,センターとの情報連係
などがあり得る。

 従来こうした局面では,パソコンと専用ボードや市販ボードを組み合わせてIT化を実現していた。しかし,パソコンや市販ボードは,設置環境・サイズの制限,信頼性,長期安定供給,OSセッティング工数など,組み込み性とともにTCOの面で大きな課題を抱えている。そこで信頼性,耐久性が高いIPv6対応の汎用コントローラを用いれば,TCOを下げつつ,高付加価値なサービスを提供できるようになる。

 また,製造現場でもIPv6のニーズはある。大型製造装置の場合,内部の複数のコントローラや機器がIPネットワークで接続されるケースが増えている。装置メーカは,ユーザに納入した製造装置の立ち上げや故障発生時に,リモートからWAN経由で個々のコントローラへ直接アクセスして解析・設定変更したい。

 しかし,コントローラに振られているIPアドレスはプライベート・アドレスであるため,WAN経由でアクセスするためにはネットワーク機器に各種の面倒な設定が必要となる。また製造装置の配置換えなどの変更に柔軟に対応できない課題がある。こうした課題はIPv6対応のコントローラを用いることで解決できるだろう。

 オフィス環境では,IPv6を用いなければ実現できないことはなかなか見つかっていないようだが,こうした産業分野のフィールドでは制御装置のIPv6対応が待たれているのである。我々は,当社の強みを生かし,新たなアプリケーションでのIPv6活用を地道に展開していきたいと考えている。次回のN+Iでもご期待に応え,新たなアプリケーションを数多くご紹介できることを楽しみにしている。

■著者紹介:
ひだい てつお。入社以来,製造現場(PA,FA)向け制御機器のソフト開発,商品企画に従事。ネットワークは,製造ラインや製造装置向けフィールド・ネットワークであるDeviceNet,FL-netの開発および普及・標準化に携わってきた。現在は,サービス・社会インフラ市場向けの制御機器,ソリューション開発を担当。余暇は子育てに侵食されているが,15年来のチーム「ニセコ・オールスターズ」(オフピステ/ツアースキー)への参加を死守している。最近,用具改良による技術障壁排除やスキー場不況に伴う新付加価値創出で,日本でも自然派スキーが急速に広がっている。IPv6も,同じような状況変化で普及していくことを予感&期待している。