11月30日に東証一部上場を果たした電通国際情報サービス(ISID,本社:東京都中野区)の瀧浪壽太郎社長に,新規株式公開後の事業戦略について聞いた。株式公開により調達した資金の主な使途は,M&Aによる事業の拡大。具体的には,戦略的な業務レベルのコンサルティング事業などを開始し,既存のSI事業を強化。数年後に年商1000億円超を目指すという。(聞き手は,佐藤 康朗=IT Pro編集)

問:新規株式公開を決めた経緯は?
:もともと今から7~8年前に新規株式公開(IPO)を資金調達の手段として検討した。ただそのときは当時の株主,特に米GE Information Systems(GEIS)の合意が得られなかったので断念した。その後事業拡大のための資金調達が必要になってIPOを再度考えたのは3年半前。再度株主である電通とGEISの両社に事情や将来計画などを説明し,理解を得た。それで東京証券取引所で株式公開することで,準備に着手したのが3年間ほど前。上場のための諸条件をクリアし,東証一部上場の承認を得た。
 IPOの主目的は,短期間で事業拡大を果たすこと。現在は連結ベースで530億~540億円程度の年間売上高を数年後に1000億円超まで高めたい。これによりSIベンダーの売上高ランキングで上位10社に入ることを目指す。

強みはオープン系のシステム・インテグレーション
個別業種に特化した業務コンサルで相乗効果狙う


問:事業拡大の基本戦略は?
:今回のIPOで調達した資金のほとんどは当社の強みであるオープンシステムによるSIサービス事業の強化/拡大に当てる。具体的には,当社ではまだ強いとはいえない業務コンサルティングなどのサービスを強化する。このために,M&A(買収による吸収/合併)による人員の確保などをこれから考えていくつもりだ。また,サービス拡充にあわせてプログラミング/ソフト開発などを行う人員の動員力が必要になる。こうした人員もM&Aや他社への出資を含めた提携などで確保できるようにしたい。
 企業文化を変えるとか,業務モデルを変革するなどの上流コンサルテーションは,これから売上を高めていく上で非常に重要と考えている。これからは企業のトップや意思決定者へアピールするためには,コンサルテーションのノウハウが必要になる。

問:目指すのはNTTデータのような大手SIベンダーということか。
:大まかな方向性で当社はNTTデータや野村総合研究所(NRI)などの大手SIベンダーとよく似ている。しかし,当社と既存の大手SIベンダーとでは強みとする事業の内容が必ずしも同じでない。例えばNTTデータでは,いわゆるメインフレーム系システムのSI事業による売上の比率がまだまだ高いし,これが強みにもなっている。これは野村證券やグループ企業に対してSIサービスを提供しているNRIでも同じ。
 これに対して当社が手がけているSI案件のほとんどはオープン系のシステム。特に銀行向けのインターネット・バンキング・システムや証券業のSTP(Straight Through Processing)システム,製造業向けの3次元CAD/CAM/CAEシステムなど先端的なシステムを得意とし,構築ノウハウを蓄積しているのが当社の強みの1つだ。
 また業務モデルの設計/構築や業務再編などに向けた戦略的なコンサルテーションやマーケティングでは大手に負けないと自負している。こうしたノウハウが最近では大手金融機関へ提供しているインターネット・バンキング・システムや流通/サービス業でのCRM(Customer Relationship Management)システムの成果に表れている。
 これから提供しようとしている業務コンサルテーションも,特に当社が強みとし実績もある金融/製造業の分野から始める。この意味で,新たに人員を調達し,新しい事業部門を設けてゼロから事業を開始しようとするケースとは違うことを強調したい。

問:米国で株価が低迷し始めて,国内景気の先行きを不安視する向きもある。2001年以降の展望は?
:最近何件かのお客様を訪問してみて直に意見を聞いてみたが,現在は楽観視している。確かに製造業の研究開発投資はここ数年抑え気味。ただし金型などの分野では,6~7割の世界シェアを占める中堅企業が日本にある。こうした中堅メーカーでは,すでに情報技術(IT)への投資に対する意識が変化してきている。こうした中堅メーカーとはすでに商談が進んでおり,こうした製造業の動向は米国景気が停滞したとしても大きな変化はないと思っている。
 またサービス/金融業の分野では大手銀行の合併や外資系企業の参入などが相次いでいる。こうした業界ではITが競争に勝つために不可欠のツールとなっている。また従来メインフレーム上で動作していた勘定系システムをオープン系システムへ移行するユーザーもすでに出始まめているため,少なくとも当社にとって受注案件を増やす機会は増える方向にあると見ている。