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UFJIS蒲原寧氏
 「35~36システムをLinux上で稼働させており,今後構築するシステムもLinuxを適用することが基本。融資システムなど第3次オンラインの更改となるシステムもLinuxで開発中」---7月20日に開催された日経Linux創刊5周年記念セミナー「Enterprise Linux2004」の基調講演で,UFJ銀行グループのシステム企画,開発を担当するUFJISのオープンプラットフォーム部長蒲原寧氏が登壇,UFJ銀行グループでのLinux導入と活用について語った。また,日本IBM,NEC,日本ヒューレット・パッカード(日本HP),ノベル,野村総合研究所がLinuxへの取り組みや構築事例を紹介した。

 UFJ銀行では,総合金融プラットフォームと呼ぶ,グループ企業の共通システム基盤にLinuxを採用している。Linuxブレード・サーバー,WebLogic Server,Oracle 9i RACを採用しており,2003年9月に中小企業向け情報提供サイトが本稼働。以来,デリバティブ情報システム,リース基幹システム,グループなど,35~36システムをこの上で稼働させている。グループ証券会社のインターネット・トレーディング・システムも現在構築中だ。さらに,基幹システムのコンポーネント化として,第3次オンラインの更改となる,融資,担保,金利,相場など銀行の基幹システムも現在開発中である。「今後構築するシステムはLinuxを適用することが基本。他のOSを採用する場合には何らかの理由がなければならない」(蒲原氏)

 蒲原氏は,Linuxを採用した理由として「LinuxサーバーとIAサーバーの組み合わせは,平均的にUNIXサーバーに比べコストは2分の1,性能は2倍で価格性能比は4倍」という高いコスト効果を備えることをあげる。また今後,サーバー市場でのスタンダードとなることによって,機能の拡充,技術者の増加,低コスト化が期待できる点も理由としてあげた。

 障害がなかったわけではない。開発フェーズでは,Linuxカーネルやライブラリのバグによるハングアップ,Java VMの障害などにも遭遇した。しかし,原因を解析し,設定を見直したりパッチを適用することなどで克服できたという。

 今後の課題として,さらなる大規模システムへの対応や,信頼性の向上をあげた。具体的にはより多くのマルチプロセッサやマルチスレッドへの対応,障害時のメモリー・ダンプ機能の標準実装,障害が発生したプロセッサやメモリーの切り離し,ディストリビューション間での互換性保障,OSによるリソース優先制御などが必要としながら「メインフレームも登場した当初は不完全であり,新技術はユーザーの活用により改良されていくもの」(蒲原氏)と指摘し「技術の普及には,ベンダーの努力だけでなく,ユーザーの協力や推進が不可欠」と結んだ。

Enterprise Linux2004会場
 日本IBMシステム製品事業 xSeries & IntelliStation事業部長 藤本司郎氏は「IBMはLinuxに対して10億ドル以上の投資を行っており,すべてのサーバー,ストレージ,ソフトウエアでLinuxをサポートする」など,Linuxへのコミットを改めて強調した。事例として,コーエーのオンライン・ゲーム「信長の野望Online」の同時接続ユーザー2万人が利用するサーバーへの36ノードのブレード・サーバー採用を紹介。また,産業技術総合研究所のグリッド・コンピューティングによるスーパー・コンピュータで,AMD Opteronを2プロセッサ搭載したeServer1058台が使用されていることを紹介した。

 NEC Linux推進センター グループマネージャーの高橋千恵子氏は「UNIX,Windowsなど他のOSが伸び悩む中,LinuxはOSとして唯一2桁の成長率を示し,用途も広がりつつある」と市場が拡大していることを指摘。同社が手がけた事例として,メガネの三城の受発注・集配信業システム,STプロダクツのFAシステム,早稲田大学の授業システム,マックスのファイル・サーバー・システムなどを紹介した。また,NECが運営するISPのBIGLOBEでは250台のLinuxサーバーを使用していること,ドイツ気候センター(DKRZ)には5台の16プロセッサItanium2サーバーを導入したことなど,大規模システムでの実績を強調した。

 日本HP インフラストラクチャマーケティング本部 Linuxマーケティングスペシャリスト 服部真也氏は,「エンタープライズLinuxの導入には,適材適所の見極めが重要」と指摘。スケールアップが必要なシステムや,Linux以外のOS固有の機能が必要な用途には向かないが,スケールアウトが有効な用途やインターネット技術の活用が可能な用途には向いているとの指針を示した。導入事例としてOracle 9iRACを使用したベンチャー・リンクの新基幹システムを紹介また,HPの社内では,年間3Tバイトを超えるメールのルーティングやインターネット・インフラなど,4500以上のLinuxシステムが稼働しているという。

 ノベル Linux事業推進部長 吉政忠志氏は「日本では米Novellの存在感は小さくなったが,実はワールドワイドでは約1200億円の売り上げがあり,従業員は6000名,NetWareとSUSE LinuxをあわせたOSのシェアは第2位だ。OSは長い間使うものであり,信頼できる会社が作っていることが重要ではないか」と,企業力を訴えた。また「『Give more than Take』を合言葉に,コミュニティから得た以上のものを提供しており,これまで管理ツールYaSTやファイル共有ツールiFolder,Microsoft Exchangeと接続するためのXimian Connectorなどをオープンソース化している。

 野村総合研究所の寺田雄一氏は,オープンソース導入の障壁として,製品サポートがないことへの不安,プロダクトの品質に対する不安,技術者が不足していることに対する不安の3点をあげ,同社でもそのような問題が実際に発生したことがあると述べた。このような問題に対しては,機能と性能を実際に評価し,不足する部分は開発するか商用製品で補い,開発方式の標準化を行う,有償サポート・サービスを利用することで解決できると指摘。実際に,同社は相場情報などのアグリゲーション・システムなどをLinuxで構築する中で,Webアプリケーション・フレームワークStrutsに足りない部分を独自開発,その成果はAltostatus(仮称T-Struts)という名称で,近くオープンソース・ソフトウエアとして公開する予定という。

(高橋 信頼=IT Pro)