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 9月4日,イベント「オープンソースカンファレンス2004」が開催された。LinuxやNetBSD,PostgreSQL,MySQL,PHP,KNOPPIX,Samba,XOOPS,Zope,Mozilla,OpenOffice.org,Rubyなど国内のオープンソース・コミュニティ 二十数組が参加。三十以上のセッションと,コミュニティによる展示が行われ,300人以上が来場した。

「世界中の知恵を集めてLooking Glassを進化させたい」

講演会場
川原英哉氏
Nicolay Samofatov氏
竹川直秀氏
パネル・ディスカッション
「オープンソースとビジネス」
パネル・ディスカッション
「コミュニティを楽しもう」
展示会場
 米Sun Microsystemsで,3次元デスクトップ環境「Project Looking Glass」を開発している川原英哉氏が来日し招待講演に登壇。川原氏は「20年前,GUIの先駆けであるMITのProject AthenaとX Window Systemが開発されたころ,SUNはNFS(Network File System)をオープンソースとして公開。それ以来,netbeansやOpenOffice.orgなど,様々なオープンソース・プロジェクトを手がけてきた」と話した。

 Project Looking Glassは,2004年6月,オープンソース化された。オープンソースにした理由として,河原氏は「Microsoftにはできないやり方でLooking Glassを進化させていきたい。多くの技術者で知恵を出し合って進化させていきたい」と語った。

 川原氏は「Looking Glass日本のコミュニティを作りたい」と,参加を呼びかけた。「アメリカ人はロジックが得意だが,日本人はアニメなどをみてもわかるとおり,感性に優れる。GUIは日本人の感性を生かせるチャンス。ぜひ参加して欲しい」(河原氏)。

「オープンソースDBMSの採用が競合に対する競争力に」

 続いてカナダから駆けつけた,オープンソースのRDBMS「Firebird」のプロジェクト管理者であるNicolay Samofatov氏が登場し招待講演を行った。Firebirdプロジェクトの運営体制について紹介した。

 Firebirdは,米BorlandのInterbaseから派生したオープンソースRDBMSである。Firebirdを開発しているのは,オーストラリアのニューウェールズに設立された非営利団体Firebird Foundationだ。以前BorlandのGeneral ManagerだったPaul Breach氏がプレジデントを努めている。

 一方,有料サポートを提供している企業としてIBPhoneixがある。Firebird FoundationプレジデントのPaul Breach氏がCEOを兼任し,Interbaseの最初のバージョンを開発したJim Starkey氏と,Interbaseのサポートを提供してきたAnn Harrison氏が社員となっており,Firebirdにクラスタリングや64ビット対応など大規模向けの機能を開発するVulcan Projectをすすめている。

 講演者のSamofatov氏自身は,カナダで放送局向けの番組や広告管理システムを開発しているBroadView Softwareという企業で働いている。「システムはデータが数十Gバイトになる非常にクリティカルなシステムだが,ライセンス料がいらず,私自身で問題をすぐ修正できるFirebirdを使っていることが,コスト競争力になっている」(Samofatov氏)という。

 またFirebirdの興味深いプロジェクトとして,Oracle互換機能を提供するFyracleというプロジェクトを紹介した。Janus Softwareという企業が開発している,FirebirdでPL/SQLおよびダイナミックSQLを実行できるようにするツールである。PL/SQLコンパイラは現在Oracle8対応のものを有償で販売しているが,Oracle9対応のPL/SQLコンパイラが完成すれば,Oracle8のものをオープンソースにする方針という。

 招待講演の最後はNTTコムウェアOSS推進部担当部長 竹川直秀氏が,「オープンソースと農業」と題しオープンソースの文化と経済を論じた。竹川氏は,かつての農村共同体は「贈与」による互酬性に基づいていたが,現代の市場経済は貨幣の「交換」に立脚している。「オープンソースは贈与に基づく文化であり,資本に依存しないため,資本主義経済を変容させる可能性がある」と指摘した。

「オープンソース開発の雇用が必要」

 続いて「オープンソースとビジネス」と題するパネル・ディスカッションが行われた。

 「オープンソースで食べていけるか」という命題に対し,テンアートニ 代表取締役 喜多伸夫氏は「テンアートニは8月に東証マザーズに上場することができた。Linuxは利益の出るビジネスができるようになった」とコメント。ただし「Linux以外のオープンソース・ソフトウエアはまだ難しい面もある。特にデスクトップは難しい」と指摘した。

 また,中堅企業でシステムを担当する菅雄一氏は,自分が開発していた仕事を外注化するため見積もりを取ったところ,その高価さに会社に自分の貢献が理解されたという経験を紹介し「オープンソースと自分の仕事の貢献を勤務先にアピールするべき」と話した。

 「コミュニティの技術者の報酬」というトピックでは,ミラクル・リナックス 取締役技術本部長の吉岡弘隆氏が,ボランティアだけでは限界があると指摘した。「開発スピードを上げるには,フルタイムの開発者を雇用するが必要がある。また工数の9割はテストであり,品質面からもフルタイムの開発者が力仕事をやることが必要」(吉岡氏)。日立製作所の日立製作所 システム開発研究所 研究員 杉田由美子氏も,Linux Kernel Sumittに参加した経験から「カーネル開発者の多くが米IBMや米Hewlett-Packardに雇用されている」と,オープンソース開発者の経済基盤の必要性を指摘した。

「場を作らなければ始まらない」

 パネル・ディスカッション「オープンソース・コミュニティを楽しもう」では,パネラーが自分のオープンソース・コミュニティとの関わりを語った。もじら組の「人と会うことが楽しみ」と,コミュニティ活動の動機を語った。

 Fedora JPやもじら組,風博士など多くのコミュニティに関わる福沢俊氏は「コミュニティの性格は団体によって大きく異なる」と指摘。PHPユーザ会の上鍵忠志氏は「プログラムが書けなくとも様々なコミュニティとの関わり方がある。自分のできる形で参加して欲しい」と話した。

 OpenOffice.org日本ユーザー会の中田真秀氏は「単に親睦を図るというだけではコミュニティ活動は継続しない」と問題提起。日本Sambaユーザ会の宮原徹氏は「場を作ることは始まりであり,その上で実際に何かを作る,実行することが重要。しかし,場を作らなければ始まらない」と指摘した。

 このほか,各コミュニティによる三十以上のセッションが開催された。この日設立されたユーザー会もあった。日本viユーザ会設立準備会により,設立総会が行われた。

(高橋 信頼=IT Pro)