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日本OSS推進フォーラム 代表幹事 桑原洋氏
 「日本でOSやコンパイラを開発する機会が減り,外部から調達したものを使用するだけになっていっている。このままでは21世紀の技術者の育成はできない。オープンソース・ソフトウエアの『中身をいじれる自由』はかけがえのないメリット」――日本OSS推進フォーラム 代表幹事で日立製作所 取締役の桑原洋氏は,オープンソース・ソフトウエアの期待をこのように語った。

 日本OSS推進フォーラムは5月18日,イベント「IPAX2005」で活動報告を行った。日本OSS推進フォーラムは,オープンソース・ソフトウエアの普及を図る官民の団体。独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)が事務局となっている。

 代表幹事の桑原氏は「このようなオープンソース・ソフトウエアのメリットを,ユーザーのメリットに転換していかなければならない」と指摘。オープンソースのメリットを生かすためには「オープンソース・ソフトウエアで,多くの企業が同じような検証や開発作業をやっていては無駄。一方で競争がなければならない。協調していくべき領域,競争していくべき領域について議論し,協調できる部分は強調していくことが重要」と語った。日本OSS推進フォーラムではこういった問題を議論するワーキング・グループを設置することを決定している(関連記事)。

 具体的に協調していく領域として,桑原氏はLinuxやミドルウエアの性能評価および検証,セキュリティに関する評価や情報発信,政府調達ガイドライン策定をあげた。逆に競争していくべき分野としてハードウエアの動作検証や評価,セキュリティに関してはサポート・サービス,政府調達に関しては具体的なシステム提案をあげた。ソフトウエアではクラスタリングや高信頼化,運用管理や監視が競争すべき分野となると述べた。

 続いて日本OSS推進フォーラムのデスクトップ,ビジネス推進,開発基盤,サポートインフラ,人材育成,標準化・認証の各ワーキング・グループが活動報告を行った。

 デスクトップWGの主査であるアイ・ビー・エム ビジネスコンサルティング サービス 木戸彰夫氏は約300台,2000~3000人が参加した教育現場でのLinuxデスクトップ実験(関連記事)について「基本機能の観点から教育現場での実用に耐えうることが実証できた」と述べた。ただし,実験ではIEに依存した教育コンテンツやアプリケーションの中に正しく動作しないものがある,などの問題点も改めて浮き彫りになった。

 今年度は自治体へのLinuxデスクトップ導入実験が行われる(関連記事)。多くの自治体がメインフレームのデスクトップを使用しているが,木戸氏は「こういったレガシー・システムはWebアプリケーションとして再構築することでLinuxデスクトップを適用できる」と“狙いどころ”を示した。

 開発基盤WGは,2004年度に実施したLinux,JBoss,PostgreSQL,MySQLなどの性能評価を報告(関連記事)。「オープンソース・ソフトウエアが適用できる領域を明確にした」(開発基盤WG 主査 日立製作所 鈴木友峰氏)。サポートインフラWG主査のNEC 堀健一氏は,「ユーザーの要求に応えられていない懸念がある」などのサポートの課題について報告。ビジネス推進WG主査の富士通 工内隆氏は,公開した「OSSのTCOガイド」などについて紹介した(関連記事)。

 人材育成WGは,2005年9月,北京でのOSS推進フォーラムに向けてオープンソースの技術を競う「OSSコンテスト」を計画している。また「オープンソース人材を表彰する『日本OSS推進フォーラム賞』の創設を検討している」(人材育成WG主査 NTTコムウェア 竹川直秀氏)ことなどを報告した。

 標準化・認証WGは経済産業省,総務省と協力し,オープンソースのメリットを生かせる「政府調達ガイドライン」の策定を行っている(関連記事)。ガイドラインは近く公表される見込みだが「『やむを得ない場合を除き,具体的な製品名を指定した調達は避ける』など表現が採用されている」(標準化・認証WG 産業技術総合研究所 田代秀一氏)。また日中韓共同でかな漢字変換などの入力メソッドの標準化を行っている。4月に入力メソッドが満たすべき要求条件を決定。6月に各国固有の要求をまとめ,2005年3月までに入力メソッドの技術仕様をまとめる計画だ。

(高橋 信頼=IT Pro)