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与謝野馨氏
 「特定の商用ソフトウエアに依存しない社会を実現することは,安全・安心な社会を実現する上で不可欠。政府と自治体はオープンソース・ソフトウエアを積極的に利用し実績を作ることで民間市場への波及効果を狙うべき」――自由民主党 政務調査会長の与謝野馨氏は6月10日,日経Linuxと日経ガバメントテクノロジー主催のセミナー「自治体Linux最前線」の講演でこのように語った(関連記事)。

 与謝野氏は自民党の電子政府政策を担当するe-Japan重点計画特命委員会の委員長を務める。講演は「オープンなe-Japanへ向けての提言~オープンソースソフトウェア(OSS)振興の必要性~」と題して行われた。

 与謝野氏は「通産大臣をやっていた6年前にTRONとLinuxの振興を指示したが,その当時は『Linuxとは何?TRONとは何?』という状況で,現在,Linuxが広く認知されてきたのは大変喜ばしいこと」と述べ,早くからLinuxに注目してきたことを明かした。

 与謝野氏は,現在日本ではWindowsがクライアントOSの99%を占め,世界の94%に比べても著しい寡占状況にあるとのデータを紹介。サーバーOSでも日本では77%がWindowsを占める。「こういう状況がいいのか悪いのか,我々が考えなければならないこと」(与謝野氏)。与謝野氏は「今やソフトウエアは経済,社会,生活の基盤。ソースコードが非公開の外国製特定商用ソフトウエアに依存していることは,正しいことなのかどうか。我が国の経済安全保障上,大きな問題であり,セキュリティ上も重大な懸念」と指摘した。米国の技術者がWindowsに比べLinuxを高く評価しているという調査結果(関連記事)にも触れ,その上で「基幹的なソフトウエアについて有効な選択肢を確立し,特定の商用ソフトウエアに依存しない社会を実現することは,安全・安心な社会を実現する上で不可欠。選択肢としてオープンソース・ソフトウエアの振興は必然と考えている」であると述べた。

 また「ソフトウエアの輸出入比率は1:30という大幅な輸入超過状態にあり,基幹ソフトウエアのほとんどを海外に依存していることを自覚しなければならない」と日本のソフトウエア技術の空洞化の問題を指摘。「外来のソフトウエアを,ブラックボックスのまま組み合わせて利用するだけでは,真の技術力は削がれる一方と考えている。オープンソースにより可能となる『中身をいじれる自由』と『中身をいじれる力』が日本のIT産業の発展には不可欠」と語った。

 さらに「東南アジアを始めとした発展途上国のIT化が進むときに,低価格なOSとアプリケーションは非常に有益」と指摘した。米国のマサチューセッツ工科大学がLinuxを搭載した1000ドルのノートPCを開発しブラジルなど5~6から計600万台の受注を受ける見通しであることを紹介,「フリーのソフトウエアであるLinuxは,国際デジタル・ディバイドの解消にも貢献できる。国際的な観点からもオープンソースの振興が重要となる」と述べた。

 その上でオープンソース・ソフトウエア普及に向けたシナリオとして,「セキュリティの観点を十分に配慮しつつ,我が国最大の利用者である政府と自治体はオープンソース・ソフトウエアを積極的に利用し実績を作ることで民間市場への波及効果を狙うべき」と述べた。「経済産業省のコンピュータ担当局の局長の机には,Linuxを搭載したパソコンが載っている。役所全体ではまだ省内のメールの問題もありWindowsを使っているが,いずれ全体でLinuxを使う時代が近づいていると考えている」(与謝野氏)

 続いて与謝野氏は自民党の取り組みについて紹介した。前述のように与謝野氏は自民党e-Japan重点計画特命委員会の委員長を務める。「委員長は私だが,若いコンピュータに精通した議員が一生懸命やってくれている」(与謝野氏)。「e-Japan重点計画特命委員会は,昨年の11月,政府システム調達におけるオープンソース・ソフトウエア利用の促進について,民間団体から要望を受けた。これを受け,特定の商用ソフトウエアや特定の技術にロックインされないソフトウエア調達のあり方について,ガイドラインの策定を検討するよう政府に依頼した。近日中に報告を受ける予定になっている」(与謝野氏)

 与謝野氏はドイツのミュンヘン市(関連記事)や米国のフロリダ市がオープンソース・ソフトウエアを採用したことに言及し,「我が国でも,政府が情報システムとソフトウエアの機能や価格を適正に評価できる能力があれば,オープンソース・ソフトウエアの調達はさらに進展するはず。近々策定される予定のガイドラインに従って,公的機関の積極的なオープンソースの調達が進展することを大いに期待している」と述べた。

 また与謝野氏は日中韓3国でのオープンソースにかかわる国際連携について触れた。「オープンソースは本質的にオープンな仕組みであり,オープンソースを通じた国際連携の強化は,経済的連携を超えた広がりがあるというのが,日中韓3国の認識。北東アジアOSS推進フォーラム,アジアOSSシンポジウムなどの民間主体の取り組み,日中韓OSS官民フォーラムによるOSS協力などの取り組みの強化を期待している」(与謝野氏)

 さらに,携帯電話やデジタル家電など,すでに多くのIT機器のプラットフォームとしてオープンソースが採用されていることに触れ「今後,政府の大規模システムやITSなどの社会的な基盤システムについてもLinuxを始めとするオープンソースの利用が進展することを期待しており,進展するよう努力をしたい」と語った。

 最後に与謝野氏は「決してMicrosoftの果たしている社会的役割を否定するわけではない。しかし日本の社会が経済活動あるいは社会活動を行っていく上で,セキュリティの問題もあり,価格の問題もあり,有効な選択肢をOSSについても持っておく必要があるのではないか。Linuxは安定性の面で優れており,発展途上国がIT化を進める上で価格という壁を乗り越えるためにOSSは有用なシステム。政治として,応援できる場面ではぜひ積極的に応援していきたい」と結んだ(関連記事:与謝野氏インタビュー)。

(高橋 信頼=IT Pro)