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 IT革命を自ら体験するために,森首相がパソコンに触れてみたらしい。ニュース報道には,振り付け(やらせ,とも言う)がありがちだ。いくらテレビ画面で森首相がパソコンを操作しているように見えても,「らしい」という言葉をつい付けてみたくなる。ひねくれた記者の根性か。

 ただ森首相やITに無縁だった人たちが,これで「IT革命を実感した」などと錯覚してもらっても困る。

 一番心配なのは,この感覚で「IT革命予算」などをばんばん打ち上げることだ。「分かった」と称して,これまで同様の公共事業予算に「IT革命にはぜひ必要だよ」などと気前良くハンコをつく環境が整ってしまう。これまでは,IT革命をまともに理解している官僚たちが,抵抗を押しのけつつIT政策を繰り広げてきた。ところが,専門知識をもった政策マンたちが押しのけられ,にわか勉強で分かったつもりになっている「アンシャンレジウム」の官僚の群れが前面に押し出てきかねない。しかも,既得権益に「IT革命」の衣をまぶしてだ。

 笑い話として,技術の進展はこんな風に進むと言われてきた。日経エレクトロニクスや日経コンピュータのような専門誌で,学会や技術の最先端の話題が紹介される。次に,日経産業新聞や日刊工業新聞のような専門紙が取り扱う。やがて日経新聞や朝日新聞が取り上げ,最後にNHKが特集を組んだときにはブームが終わりかけている・・・。

 実際にはいくつもの例外があって,NHKが取り上げてからブームが加速することも多いが,笑い話としてはよくできている。

 しかし今回のIT革命ブームは,技術に無縁だった大物政治家までがここに踏み込んできて,自らパソコンをいじり回しているところから始まっている。

 「そこまでITが浸透してきたか」と,この追い風をうまく活用すべしの意見もあるだろう。しかし,喜んでばかりはいられない。政治家の発言の裏に見え隠れする思惑には注意を向けておいた方が良い。

 IT革命はいま,インターネットを基盤にした激しい革命の段階に入っている。ポイントは,(1)これまでパソコンと一体だと錯覚していたインターネットが実はパソコンとは別物であり,ケータイや冷蔵庫,自動車とつながる,とてつもない巨大なインフラだということ,(2)これまで通信だと錯覚していたインターネットが実は,通信も放送も飲み込み,そのなかで放送も通信も融合させてしまう,やはり,とてつもなく巨大なインフラだということ----である。

 投資は,こうした巨大なインフラの構築に向けられるべきだ。旧来型の人々の大量参入により,こうした先鋭的な投資が阻害されることになるのではないかと憂鬱になる。思い過ごしでなければ良いのだが。