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 最近,多くのIT関連ニュース・メディアで米Rambusの名前を見かける。Rambus社とは,高速のメモリ・インタフェース「Rambus]の技術を開発した企業。Rambusインタフェースを使ったDRAMには,Rambus DRAM(RDRAMと略記)と後継のDirect RDRAMが存在する。

 ところでニュース・メディアでの扱いをおおまかに分けると,(1)パソコンの主記憶素子のDirect RDRAMへの移行スケジュールが大幅に遅れそうだ,(2)Rambus社はSDRAMやDDR SDRAMに使っている技術で,多くのメモリ・メーカと特許ライセンス契約を結びつつある,(3)Rambus社はDirect RDRAMの同期クロック周波数を引き上げたり信号に多値論理などの技術を導入して,DRAM素子のデータ転送能力を高める努力をしている----の三つに集約できる。

 一連の動きを分析した結果から,Rambus社を巡る新たな問題が出てくる可能性があると筆者は判断する。それは米Intelなどと訴訟合戦に至る危険性があるというものだ。

 読者は少々大胆な予測と思われるかもしれない。以下ではその理由を説明しよう。

Rambus社は株主の利益を優先する

 Rambus社の戦略は,DDR SDRAMなどのライセンス契約を結んだときの発言に垣間見ることができる。それは,「DDR SDRAMのロイヤルティ料率は,Rambus関連製品よりも高く設定する。DDR SDRAMはDirect RDRAMと競合する製品。その競合製品に安いライセンス料で技術を供与することに,Rambus社の株主は納得しない」というものだ。つまり株主の利益を最優先にしている訳だ(これ自体は不自然ではない)。

 IT関連メーカであれば,「技術開発を推し進め,その成果を明らかにして市場を活性化していく」という戦略をとることは珍しくない。

 しかしRambus社の場合,「上記の(3)のように現時点で次々と将来の技術を明らかにしているのは,それによって株価を維持し,株主の利益を守ろうといている」と筆者にはみえる。こう考えざるを得ないのは,パソコンの主記憶素子としてDirect RDRAMを推進するという実務の面において,Rambus社は具体的な作業を他社まかせにしている部分が多いからだ。つまりコンセプトを明らかにしても,それに従うメーカが存在しないと市場の活性化につながらない構造になっている。

 Rambus社の姿勢は当初からそうだった。パソコンの主記憶素子としてDirect RDRAMを選んだのはIntel社である。Direct RDRAMを主記憶として使うパソコン用チップセット「820」などを設計したのもIntel社だった。

 820チップセットを使ったシステムの動作が安定しないという問題は,早い段階から明らかになっていた。しかし,「数十ドル程度のチップセットできれいに整形した信号を発生/受信できるのかどうか」「安価な4層配線マザーボードで信号を確実に伝送できるのかどうか」という質問に対する具体的な回答を,Rambus社から聞くことはできなかった。

 任意のマザーボードとメモリ・モジュールを組み合わせるパソコンでは,いわゆる“相性問題”が生じる。この相性問題を吸収するマージンが重要になるが,技術的な裏付けについてRambus社からの説明は十分ではなかったのを記憶している。

Intelとの契約で,当初から厳しい条件を示した

 Rambus社のスタンスは,「Rambus技術を使ったシステムの構築は,基本的にライセンス先のメーカが考えること」である。この姿勢はIntel社に対しても同じである。

 1996年12月に両社は,パソコンの次世代主記憶素子としてDirect RDRAMを共同開発すると発表した。そのときの基本的な関係は,(1)特許など知的財産権の基本部分はRambus社が保有する,(2)Intel社は他のメモリ・メーカと同様にRambus社のライセンシの一つにすぎない---というものだった。

 しかもIntelに対して,(1)Direct RDRAM対応チップセットを出荷した時点でメモリ・メーカに対する最高ロイヤルティ率を2.5%から2.0%に引き下げる,(2)Intel社は100万株相当のワラントを所有するが権利を行使できるのはDirect RDRAM対応チップセットの割合が25%以上になった時点----という条件をつけた。Intel社に対して,Direct RDRAM用チップセットの開発を促したわけだ。

 確かにDirect RDRAMの開発で,Intel社とRambus社は協力体制を敷いた。しかし,現時点の両社の関係は必ずしも緊密ではない。

 まずIntel社は,Direct RDRAMと競合するPC133 SDRAMに対応するチップセット「815」などにも力を注いでいる。結果として,Direct RDRAM対応チップセットの比率は,現時点でも25%に達していない模様だ。同じマイクロプロセサを使ったシステムで,PC133 SDRAMを使った方がDirect RDRAMよりも性能が高いというベンチマーク結果も明らかにしている。

ライセンス契約締結をチップセットやシステム・メーカに要求へ

 それでもIntel社は,公式には「パソコン用次世代主記憶素子はDirect RDRAM」との姿勢を貫いている。

 ただPentium III後継のPentium 4用チップセットとして,Direct RDRAM対応の850(開発コード名:Thehama)のほかに,PC133 RDRAM対応のチップセットをIntel社は開発しているといわれる。パソコン用主記憶が完全にDirect RDRAMに移行する時期はさらに遅れることになりかねない。

 このような状況に対して,株主の利益を優先するRambus社はどのような手を打ってくるのだろうか。

 PC133 SDRAM対応のPentium 4用チップセットを直接問題にすることは難しい。すでにパソコン・ユーザに受け入れられているPC133 SDRAMよりも,Direct RDRAMと競合するDDR SDRAMを問題視したほうが理屈に合う。しかもRambus社によると,同社のDDR SDRAMの基本特許はメモリ素子だけでなく,メモリ・コントローラつまりチップセットにも及ぶ。

 Intel社はすでに明らかになっているように,マルチプロセサ構成のサーバ向けにDDR SDRAM対応のチップセットを開発中である。Rambus社がこの件でIntel社に対して何らかの行動を起こすとしたら,まずDDR SDRAMチップセットを問題にする可能性が高い。すでに多くのメモリ・メーカがこの特許に対してライセンス契約を結んだという実績もある(日立製作所との契約にはメモリ・コントローラに対するライセンスも含まれている)。

 DDR SDRAMを搭載したシステムに対しても,Rambus社がライセンスを要求する可能性があると筆者は考える(日立との争いでは,セガ・エンタープライゼスのドリームキャストが問題になった)。これは,Intel社のチップセットを使っているかどうかには関係しない。Rambus社はIntel社との契約でRambus社はパソコン・メーカやユーザに対してライセンス料を要求しないことになっている。しかし,ワークステーションやサーバなどに関しては明確ではない。

 すでにIBMなどがワークステーションやサーバにDDR SDRAMを使うことを決めているといわれる。いずれ大きな問題となる可能性がある。

 このように,Rambus社のDDR SDRAM技術に関する特許問題は,今後チップセット・メーカやシステム・メーカを巻き込みかねない状況だ。日立がRambus社とライセンス契約を結ぶときに発した言葉が,筆者の脳裏に強く残っている。

 「現時点でもRambus社の特許を認めたわけではないがライセンライセンス契約を結んだ・・・」。