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 次世代携帯電話IMT-2000のスタートがあと1年足らずに迫ってきた。NTTドコモは2001年5月末に東京23区と川崎・横浜地区で,IMT-2000のサービスを開始すると発表した。これに続き,東海,関西では2001年12月ごろ,残る地域も2002年4月までにはサービスを開始する予定だ。これに追随するのがJ-フォングループ。ドコモに遅れること約半年の2001年12月に,J-フォン東京,東海,関西でサービスイン。2002年10月ごろには全国展開の計画である。今年10月に誕生予定の新生KDDIグループ(現DDI,KDD,IDO)は,さらに遅れて2002年9月のサービス開始を予定している。

IMTのエリアは4,5年はPDCに追いつけない

 期待は大きいIMT-2000だが,普及するためには乗り越えなければならないいくつものハードルがある。最大のポイントは既存の携帯電話(PDC)からの乗り換え需要を喚起しなければならないことだろう。現在の移動体電話の加入者数は約5795万人(2000年4月末時点)。すでに飽和点に近い。乗り換えとなると,PDCよりどこがどれだけ優れているかを訴えなければらない。実はこれが結構難しいのである。

 まずは,エリアの問題。ドコモのPDC(800MHz)は,人口カバー率で全国ほぼ100%に近い数字を達成している。これに追いつくのは簡単なことではない。ドコモは,2004年3月末までにはIMT-2000の人口カバー率を80%以上に引き上げようとしているが,80%という数字は実際に利用してみると使えないエリアが多いと感じる。少なくとも4,5年間は明かにPDCに劣ることになる。しかしそれは最も先行しているドコモでのこと。

 KDDIの場合,状況はもっと深刻だ。いったんはドコモやJ-フォンと同様のDS-CDMA(旧称:W-CDMA)方式での参入を検討していたが,結局はセルラー/IDOが現在提供しているcdmaOneの流れをくむMC-CDMA(旧称:cdma2000)方式でIMT-2000に参入することに落ち着いた。合併各社の思惑による方式決定の遅延は,スタートを遅らせたばかりでなく,後のエリア拡大にも影響を及ぼしそうなのだ。

高速データ通信がIMT-2000の売り文句だが・・・

 では,IMT-2000の優位性はどこにあるのか。PDCに比べて優れているとされているのが,通話品質とデータ通信速度だ。ところが,たとえばドコモの最新端末に搭載されているハイパートークは,フルレート圧縮方式により音声データ量を従来の倍(実効部分8kビット/秒)に拡大することによって大きく通話品質を改善した。IMT-2000では,ハイパートークのさらに1.5倍の最大12kビット/秒の実効データ量を確保して,もっと自然な音に近づけるという。しかし,普通に会話する分には現状のハイパートークの通話品質でも十分と思えるのだ。

 もう一つのデータ通信速度の高速化は確かに大きな優位点である。というよりPDCに差を付けられる部分はこれしかないと言ってもいい。ドコモのパケット交換サービスは現在,最大28.8kビット/秒。これが,384kビット/秒にまで高速化される。回線交換も9.6kビット/秒が64kビット/秒にアップする。通信速度が速くなれば,データ量の多い動画なども送れるようになる。

 しかし,ここにも落とし穴がある。この高速データ通信をいったい何に使うのかということだ。新着ビデオなどのクリッピングサービスなど,一部有望な使い道は考えられるが,各電話会社が提供を始めそうなテレビ電話はどうだろうか。一般の人たちにどこまで受け入れられるかは未知数。しかも,パケット通信はデータ量課金なので,高速だからといって大量にデータを読み込むと非常に高くつくことになる。

 結局行き着くところは料金だ。ドコモは現在のPDCと同等にすると言うが,少なくともパケット料金については,高速になる分,ビットあたりの単価をかなり安く設定しないとユーザーは納得しない。いろいろ考慮するとIMT-2000とPDCとのデュアル端末というのが当面の解決策かもしれない。IMT-2000とPDCの主役交代はかなり先のことになりそうだ。

(真下 佳樹=日経モバイル編集長)