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 「著作者に無断で作成した楽曲のデジタル・データをWebで配布できる状況にしておいた責任は,ISP(インターネット・サービス・プロバイダ)にある。よって,これを放置しておいたISPは,楽曲の著作者に対する賠償責任を負う」---。

 この判決は,ドイツのミュンヘン地方裁判所が4月12日(現地時間)に同国著作権法に基づいて下したものだ。著作者に無断での楽曲配信---すなわち違法コピー行為に対して,データをアップしたユーザ(Webサイト開設者)ではなく,ISPがその管理者責任を問われた,おそらく世界でも初めての判決となる。海の向こうの判決とは言え,注目すべき判断だろう。

 原告はドイツのCD会社。被告は米America Onlineのドイツ子会社「AOL Deutschland」( http://www.aolpresse.de/ )である。原告の主張は「当該楽曲を収録したCDは30マルク(1マルク=約56円)で市販されている。これをネットでデジタル・データとして公開,誰もがタダで入手できるようにした。この行為を放置しておいたのはプロバイダの責任である」というもの。そして原告は被告プロバイダに対して10万マルクの損害賠償を請求していた。もちろんAOL Deutschland社は真っ向から反論した。しかし結果はCD制作者側に軍配が上がった。なおミュンヘン地裁は,賠償金額に関しては後日決定を下すとしている。

 楽曲を著作者に無断でMP3などのデジタル・データ化し,Webで公開しているサイトは世界中にあふれている。日本も例外ではない。日本音楽著作権協会(JASRAC)は,国内でもこれら「違法サイト」を常時把握している。JASRACはこうしたサイトを発見した場合,即座にサイト開設者に対し,楽曲データをサーバから削除するように警告を出している。

 日本国内でも,違法MP3データを配信していた個人が著作権法違反で摘発されたケースはある。しかし,楽曲違法配信に関してISPがその管理者責任を問われたケースは現在のところ存在しない。

 しかし,著作権法違反ではないが電子会議室での発言に関わる名誉毀損(きそん)訴訟で,発言の書き込み者だけでなくISPであるニフティ(本社:東京都品川区)の管理者責任が問われたケースがあった。この裁判の1審では,書き込み者本人や会議室管理者に加え,ニフティが全面敗訴している。適用された法律こそ異なるが,「法に反するような情報をサーバに放置していた」という点で,問題の根は一緒だ。

 そうした意味から今回のミュンヘン地裁判決は,海外の事例とは言え,日本のISPも大いに参考にすべきケースだと言えよう。MP3に限らず,MIDIデータなど明らかに著作者に無断で楽曲データをアップしているサイトなど,日本でも山のようにあるのだから。

(田中 一実=インターネット局ニュース編集部副編集長)