沖縄サミット(主要国首脳会議)が7月21日から始まるが,その主たるテーマがIT(情報技術)となることで,コンピュータやネットワーク業界はもとより,それらと関係のない業界も,さらには一般市民もITに注目し始めた。歴史的に見れば,こうしたテクノロジの活用問題が政治的な討議の主テーマとなることは異例だ。画期的でもある。そうした事情からか,IT投資をすることがお祭り騒ぎのように持ち上げられ,熱気ムンムンの状況になっている。

 しかし,騒いだだけで終わらせてしまう日本特有の危うさを感じているのは,私だけだろうか。ネットバブルが発生したときの状況と似ていないだろうか。

 サミットでは,「IT憲章」が発表される予定で,新聞にその骨子が掲載された。その骨子である「ITは世界経済の成長に不可欠なエンジンである。情報化社会の健全な発展のために民間主導で,政府の関与は透明で最小限,非差別,予測可能とする。主要8カ国は競争や技術革新を刺激する政策を採り,不正に対抗するとともに,デジタルデバイドを是正する」という主張には異論は全くない。

 問題は,具体的な取り組み策。「情報化がもたらす機会の獲得」,「デジタルデバイドの解消」,「将来への取り組み」が挙げられているが,そのなかでの施策に特段の目新しさや画期的なものが感じられないのである。従来から求められていたことが,総花的に散りばめられている。こうしたことから類推すれば,各省庁がこれからITサミットを受けて予算取りをするのに,まんべんなく配慮したものという見方ができる。IT活用で経済,社会を新しい時代のものに切り替えていくという「におい」がしないのである。

 施策のなかで期待されているものの一つが,「公的部門の積極的なIT活用」だ。「電子政府の構築を急げ!」という見出しの記事が出てきている。

 ここで私が問題にしたいのは,インターネットを主軸とするネット社会のポイントは,知識やノウハウが組織を横断して水平型,ネットワーク型に情報共有されていく世界を創造することだと考える。これが実現することで,経済・ビジネス・社会活動の最適化が図られていくものとの仮説を立てている。

 しかし,例えばIT業界の識者が主張している電子政府構想を急げという根拠のなかに,「国民へのサービス向上」「問題解決力の向上」「仕事の効率化などのために官公庁内,官公庁間の情報共有の徹底を図れ」という項目は見当たらないのである。当然のことながら,沖縄サミットの「IT憲章」やそれらに関する施策に,情報共有の文言は一切姿を現さない。そんなことは,枝葉末節という考えなのか,それとも触れて欲しくないテーマなのか。

 電子政府構想で,現状追認型の情報化を進めていくことにでもなれば,縦割り行政がさらに強化されるだけだろう。公共サービスの質の向上や,抜本的なコスト削減は期待薄となる。

 同じことが,福祉とか社会生活の問題解決にも,民間ビジネスの問題にも当てはまると筆者は考える。いまは,企業間の柔軟なビジネス連携によって経済活動を活発化させることが求められている。そして,パートナシップと自己責任に基づくコラボレーション体制をうまく運用していくためには,踏み込んだ情報共有ができるのかどうかが核心となるのである。