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 「インターネットで格付けは見られますか」----。最近,ネット株取引に熱心な知人から,こうたずねられた。インターネットによる株取引や銀行口座が増えて,個人レベルの金融ネットワークが定着しつつある。実際,格付け機関に勤める私にも個人からいろいろな質問が寄せられるようになった。

 格付け機関は,世界的に有名なムーディーズ,スタンダード&プアーズ(S&P)をはじめ,日本には日本格付投資情報センター(R&I),日本格付研究所(JCR)などがある。格付け機関といってもいずれも会社組織で,各社はインターネットによる情報提供を充実させている。検索エンジンで「格付け」を調べれば,各社のURLが一覧できる。興味のある人はR&IのホームページのURL( http://www.r-i.co.jp/ )をご覧いただきたい。

 でも冒頭の質問には,正直言って戸惑ってしまった。確かに,株式に関する格付けは多い。しかし一般に知られる「格付け」とは,債券を評価するための格付けのことだ。だから「この会社の格付けがAAA(トリプルA)なので株を購入しよう」というのは早計だ。一般に「格付け」や「AAA」という言葉は知っていても,何に利用するのかは認知されてはいない。ここではBizITの『記者の眼』欄を借りて「格付け」とは何かをまとめてみよう。

 まず,「債券」とは政府や会社が発行する借金札と思えばよい。政府が発行する債券が国債であり,会社が発行する債券は社債(あるいは事業債)である。社債は企業の資金調達の一つとして位置づけられており,一般に5年や10年間といった期間と一定の利率が約束される。株式と違って,社債を買えば元本の返済と利子が返ってくるので安全な投資といえる。

 ただし,元本や利子が必ず返ってくるとは限らない。会社が倒産して社債は紙クズになることもある。会社が業績不振で利子が期日どおりに支払われないこともある。社債が無効になったり,利子が支払われないことをデフォルト(債務不履行)という。

 どの会社が発行した社債を買えばよいのか。この会社の社債は安全なのか。社債を買うための判断材料が必要になる。その判断材料が「格付け」である。つまり「格付け」は,会社が長期にわたり業績を維持できるか,つまり会社の信用力を評価する情報提供サービスなのだ。実際には専門のアナリストが企業の財務や事業戦略をこと細かく調べ,格付け委員会でAAAやBBといった符号を決定している。

 格付けは短期で株式を売買するには向かないかもしれない。でも,株式で資産運用を考えている人が会社を研究する場合,格付けは十分役に立つはずだ。そのときにAAAといった符号に注目するだけでなく,なぜこの符号になったかの根拠をしっかり確認してほしい。

 格付け機関は情報提供サービス業である。だからインターネットでの発信について各社は力を入れている。それぞれのホームページを見れば,格付け符号が一覧できるページのほかに,格付けの理由が書かれたニュースリリースや文書情報が見つかるはずだ。

 パソコン・マニアの人がネット株取引に取り組む例は多い。だが,生半可な知識で手を出すと痛い目に会う。ここでは持ち前のマニア精神を発揮して経済や会社の知識を習得したうえで,取り組んでほしい。