インターネットから得る情報は無料がいいか,有料がいいか。もちろん,ユーザーにとっては無料がいいに決まっているし,今まではインターネット上のほとんどの情報は無料だった。ところが最近,ちょっと考えさせられた。発端は日本オラクルが立ち上げたコミュニティ・サイト「chienowa.com」(知恵の輪ドット・コム)。ユーザーのさまざまな疑問に専門家が答えるWebサイトである。

 chienowa.comは,複数の専門家から回答を求め,気に入った回答を選ぶという,一種のマッチング・サービスを提供してくれる。質問と回答という情報のマーケットプレイスだ。ユーザーが回答を選択した時点で課金が発生し,回答情報料の8割が回答者に支払われる。質問する側は回答を得られるし,回答する側は自分の知識をお金に替えられるわけだからちょっとした小遣い稼ぎになる。回答実績(厳密には回答が採用された実績)によって回答者を格付けしていく仕組みで,格が上がると,回答に高い値段(それでも最高で1件1000円)を付けられるようになる。

 話はわかりやすいし,質問する側にとっても回答する側にとっても面白そうではある。が,このコミュニティ,果たしてうまくいくのだろうかという懸念は払拭できない。というのも,インターネットにはこうしたコミュニティはすでに存在しているからだ。典型例がメーリング・リストやニュース。これらのコミュニティでは,質問を投げかけ,コミュニティのメンバーから回答をもらうことはごく普通のやりとりである。しかも,chienowa.comと違って料金はかからない。あくまでもメーリング・リストの管理者がボランティアでサーバーを運用し,回答者もボランティアで情報を提供する。さらに言えば,パソコンなんでも相談室というような,ボランティアで相談を受けてくれるようなWebサイトも存在する。そんな文化が根付いているインターネットで,課金を前提とするコミュニティがどれだけ受け入れられるか。

 こうした文化とは逆に,情報を有料化するからこそ情報の質が向上し,コミュニティがうまく機能するというのがchienowa.com側の見方。回答者は,質問者に回答を買ってもらってはじめて情報料をもらえる。わかりにくい回答では,質問者が選んでくれない。そこで,回答者は丁寧でわかりやすく,簡潔になるように回答を練る,というのがchienowa.comが描くストーリーである。有料とはいっても,料金も安い(高くても1000円)。1件10円程度ならそれほど苦にはならないだろう。本当に困ったときに有益な回答が得られるのなら1000円も決して高くはない。コミュニティとしてのハードルが低そうな点も挙げられる。メーリング・リストやニュースでは,テーマにそぐわない話題を投稿すると,メーリング・リストでは「よそでやってくれ」と撥ね付けられてしまうケースもある。相手が業界の知識人だと思うと敷居が高いと感じてしまうこともあるかもしれない。chienowa.comなら,話題の範囲が比較的広いし,料金を払うわけだから何を聞くにも抵抗は少ないだろう。過去に誰かが聞いた質問なら,人に聞くまでもなくchienowa.comのデータベースから答えを見つけられる。

 今の時点では,こうしたコミュニティが広く受け入れられるかどうかはわからないが,アイデアは面白い。問題は,どれほど“使える”情報が集まるか。使える情報があってはじめて,有料か無料かの議論も成り立つ。さて,chienowa.comの新たな試みで,どんなコミュニティができあがるか,楽しみだ。