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 私ごとで恐縮だが,この6月1日に異動した。日経コミュニケーションという情報通信の雑誌から,米国で勃興しつつある最新ビジネスの情報をレポートする「日経E-BIZ」というニューズレターに籍を移した。居場所が変わっただけで,日々の出来事やニュースがずいぶんと違って見えてくるから不思議だ。

 情報通信分野では,米国系の新興企業が次々に日本に参入してくる。インクトゥミ,レベル3コミュニケーションズ,ジュニパーネットワークス,アバヴネット,アカマイ・テクノロジーズ,F5ネットワークス,クアルコム・・・。これまでは,こうした企業が引っさげてくる技術やサービスが,日本市場において受け入れられるのかという視点で眺めていた。技術やサービスの中身を徹底的にあぶり出し,ライバルと比較してみるというアプローチだ。

 ところが,こうした米国のIT(情報技術)系新興企業の観察の仕方にはもっと別のやり方がある。どの企業にも共通している点,すなわちIPO(新規株式公開)によって株式市場から多額の資金を調達し,その潤沢なマネーを元手に一気に世界展開を進めているというポイントに着目する方法だ。

 IPOと言うと最近では,「赤字続きで利益が出る見通しもないのに株価だけが高騰」「ビジネス・スクールを出たての若い経営者が株式公開で億万長者に」「いや,米国のインターネット・バブルは弾けた」などという面ばかりが強調される。

 しかし,日本の情報通信市場を席巻せんばかりの勢いで次々に米国の新興企業が押し寄せてくるのは,技術やサービスが優れているという素朴な理由だけではないのは確かなのだ。潤沢な資金があるからこそ世界展開ができるのか,調達資金に見合った業績を上げるには世界展開が必然なのか・・・。いずれにしても,米国のIPOというハードルをクリアした新興企業は,確実に日本という市場をとらえてくる。今をときめくシスコシステムズやヤフーも例外ではない。

 逆に,日本の新興企業が大規模な資金調達に成功して本格的に世界展開したという例はほとんど聞かない。ITベンチャーを支える資金量の面で,日本は米国に圧倒されている。(1)VC(ベンチャー・キャピタル)による投資,(2)IPOによる資金調達,(3)M&A(買収・合併)という三つのカテゴリにおいてことごとくにである。米国の大手M&A仲介企業のブロードビュー・インターナショナルの調べによれば,99年度において,VCによる投資は日本が約600億円だったのに対し,米国は約2兆1000億円で約38倍。IPOは日本が約2700億円,米国が約1兆4000億円で約5倍。M&Aは日本が約4兆2000億円に対して米国が約75兆3000億円で約17倍の大差が付いている。

 米国におけるインターネット企業の株価調整(いわゆるバブル崩壊)が進んだとしても,米国市場で厳しく選別された粒ぞろいの新興企業がやはり潤沢な資金に支えられて次々に日本に乗り込んでくるだけ。現状と大きな変わりはないだろう。一方の日本は,どれだけのインターネット企業を世界に送り出せるのか。

 そのメカニズムを“複眼”で観察し,分析していく必要があると感じている。

(水野 博泰=日経E-BIZ副編集長)