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 不振にあえぐ建設業界。さぞかし情報技術関連向けの話題など冷え切っているのかと思いきや,実はASP(アプリケーション・サービス・プロバイダ)形式の新サービスに話題が集まり始めている。その新ASPとは「プロジェクト管理システム」だ。

 このASPでは,ハード・ディスク領域を貸し出す「ホスティング・サービス」を軸に,(1)電子メール機能,(2)掲示板機能,(3)スケジュール表示機能,(4)図面管理機能,(5)ユーザ管理(セキュリティ)機能などを付け加えたインターネット/イントラネットのサービスを提供する。ユーザはWWWブラウザを通して,作業に必要な図面を探し出して閲覧したり,関係者にメールで情報を提供したり,進行チェックを画面上で確かめることができる。

 建設業界では,何か建物を建てようとしたときに,設計図面や建設現場ごとの進捗状況など,施工現場で働く複数の企業間で大量の情報が交錯する。特に重要な設計図面は,紙図面からCAD(コンピュータ支援による設計)図面データへと形態が変わってきたため,施工現場でも複数のコンピュータをつないだネットワークを構築する必要が出てきた。

 しかし,建物プロジェクトごとにそこで働く人たちや企業の顔ぶれはコロコロ変わる。きちんとしたネットワークを構築しても,建物が建ってしまうと役目を終えてしまう建設現場では,IT化の費用対効果が低いと考えられている。

 こうした不都合を解消しようと,ASP形式のプロジェクト管理サービスに注目している大手ゼネコンを含めた建設関連会社は多い。システム管理の多くをASPに担ってもらおうというのだ。

 ニーズの高まりと平行して,プロジェクト管理サービスを提供するASPベンダも急増している。米国系ASPベンダが気合いを入れているほか,建設業向けのCADを開発してきた有力企業も参入し始めた。米Cephren社の「ProjectNet」,米Buzzsaw.com社の「ProjectPoint」,米Bentley Systems社の「Viecon.com」などがそれだ。数えてみると20~30社ほどがASP事業に手を染め始めている。

 日本国内では,こうした米国系ASPベンダと手を組んで,日本市場にマッチした形でプロジェクト管理サービスを提供し始める企業が増えてきた。日本ユニシスが4月からサービスを開始した「ProjectCenter」,今夏からサービスを開始するビーイングの「ReviewIt AEC」などがその代表例だ。

 国内のASPベンダも動き出した。富士通はオリジナル・ブランドの「Virtual Private Office」を拡張したプロジェクト管理サービスを提供し始めている。NECは独自製品の「工事監理官」をベースにしたASPサービスを今秋にも発表すると見られる。

 しかし,ASP事業だけで儲かるとは思えない。各ASPベンダの利用料金体系を見ても,プロジェクトあたり月額十数万円程度を上限に,安いものではタダで使えるASPまで出現した。建設現場がどのくらいあるのか見当がつかないが,必ず儲かるというわけではなさそうだ。では,ASPベンダの狙いは何なのだろうか。

 最終的には,建設関連企業がプロジェクト管理サービスの輪のなかで,入札を始めとする電子商取引,設計や施工に関する情報交換,建物が完成した後のビル・メンテナンス用情報蓄積といった建物のライフサイクルに合わせた情報を提供しようと考えているのだ。一度始めたプロジェクトは,建物が消えてなくなるまで,ずっとASPを利用してくれるようになるうえに,電子商取引によるマージンなども見込める。

 ただしそこにたどり着くためには,それなりの数のユーザを集めなければならない。プロジェクト管理サービスの必要性を,広くたくさんの人に感じてもらわなければならないのだ。プロジェクト管理サービスは,これまでコンピュータに触れることが少なかった人にまでインターネットを介したシステムを使うことを強要する。慣れない人だと,ちょっと敬遠するかもしれない。事実,筆者がプロジェクト・リーダになって,編集部内の記者数名に使い方をマスターさせ,使用するルールを徹底させようと思ったら,かなり気が遠くなった。

 ASPサービスの利用を強要するのではなく,多くのユーザが「使いたい」と積極的に触れようとしてくれる情報を,ASPベンダは提供する必要がある。そのため,建設現場の天気予報から業界向けのニュース配信,現場の映像配信サービスを開始するなど,あの手この手でコンテンツを充実させようとしている。また,無料でプロジェクト管理を体験できるような「お試しサービス」を展開し,ユーザ獲得に腐心している。

 必要なのはサービス内容だけではない。サービスを提供する経路も重要になる。日本国内の建設現場では,携帯電話を持っている人の割合が非常に高い。建設現場を移動することが多いこの業界人には必須のアイテムなのだ。もしASPを使ったプロジェクト管理サービスを定着させようとするならば,携帯電話,とりわけiモードを意識したサービス経路を確保するべきだろう。

 次世代携帯電話では,よりインターネットとの親和性が高まることが予測される。次世代携帯電話を使って,その日の記録を提出し,本日の業務内容を確認し,図面を見て,1日の業務報告をする。IT化された建設現場の将来像が目に浮かぶ。

(渡辺 一正=日経CG編集)

 なお,日経CGは7月号のレポートで「建設業界で脚光浴びるプロジェクト管理ASP」(pp.98~111)を掲載しました。残念ながら日経CGのWWWサイトや弊社「記事検索情報サービス」ではお読みいただけませんので,活字版の日経CGをお求め下さい