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 「Napster」「Gnutella」と呼ぶソフトウエアがインターネットの世界で台風の目になっている。

 これらのソフトウエアの仕組みはこうだ。まず無料でダウンロードする。そうすると,これらのソフトウエアをもつユーザのあいだで,MP3で圧縮したデジタル音楽コンテンツなどが極めて効率よく融通し合えるという驚愕すべき仕組みである。Napsterなどを利用するユーザが新しいコミュニティを形成し,そのあいだをデジタル・コンテンツが無料で行き来することになる。

 わずか3カ月で利用者は1000万人を突破したというから爆発的だ。もちろん無料だということとインターネットを介して手軽にダウンロードできることが普及の原動力の一つとなっている。この爆発的な普及ぶりみてを,「WWWブラウザの以来の大発明」という声さえ出ている。

 これらが大きな話題になっているのは,鑑賞する側ではデジタル・コンテンツが「無料で入手できる文化作品」になる半面,有償でこれらを提供してきた音楽産業や出版産業にとっては著作権を破壊する「犯罪的」システムだからである。

 インターネットは当初,互いに無償で便益を提供しあう「献身のネットワーク」として発達した。登場時のWWWブラウザを思い起こせば納得できるだろう。そういう意味でNapster,Gnutellaは,まさにインターネット的ソフトといえる。

 「無料」「無償」の世界だったインターネットは,いまや起業家に巨万の富をもたらす新しい経済世界を生み出している。こういう観点から考えると,無料コンテンツ流通の仕組みも,価値ある機能を果たしているプロセスに対しては,適正な利益が配分されるビジネス・モデルへといずれ進化すると期待して良いだろう。もちろんその過程で,単なる中継機能だけで,本質的には付加価値をもたらしていなかった中間プロセスは消滅する運命かもしれない。

 しかし,相互に端末に入っている自分の資産を提供しあうNapsterやGnutellaの仕組みは,インターネットに常時接続している環境を前提にして考案されている。日本にとっては,これが大きな問題だ。

 確かに日本でも,企業や大学では常時接続の環境が構築されている。ただ,こうした趣味に相当するような仕組みは,企業内の業務システムでは利用できないようにしている場合が少なくないだろう。電話料金が定額だったり,CATVのネットワークやxDSLといった広帯域の常時接続の環境が一足先に浸透しつつある米国社会だからこそ,こうしたビジネス・モデルを次々と思いつくのである。

 「インターネット環境が整っていない日本がモタモタしているうちに,来るべきネットワーク社会のビジネス・モデルは,米国発あるいは北欧発で次々と押さえられてしまう」。そんな悪寒を感じるのは,筆者の思い過ごしだろうか。