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 この9月26日,日米のマイクロソフトはWindows 2000の最上位版「Datacenter Server」を正式発表した。同社にとって長年の悲願である「大規模サーバー市場への本格進出」を果たすための最終兵器である。Datacenter Serverは最大で32個のプロセサと64Gバイトのメモリーを扱える。仕様のうえでは,ハイエンドUNIXにまったく引けを取らない。

 だが,その登場は時機を逸したと言わざるを得ない。マイクロソフトがWindows 2000の開発遅れで失った2年の間に,サーバー市場の状況は様変わりしてしまったからだ。一時は「早晩消え去る」とまで喧伝されていたUNIXが完全に息を吹き返した。逆に今のマイクロソフトには,当時の勢いがまったく感じられない。

 変化をもたらしたのは,言うまでもなくインターネットである。今やインターネット・ビジネスと切り離して,大規模サーバー市場を語ることは不可能に近い。そして,その市場はUNIXが席巻している。

 なかでもサン・マイクロシステムズの存在感は圧倒的だ。「Network is the Computer」というシンプルなメッセージを10年近く言い続けて来た“執念”が実を結んだ。ある独立系インテグレータは,「最近は,Windowsでシステムを提案すると,『なぜサンじゃないんだ。理由をきちんと説明しろ』とお客様に詰問される」と打ち明ける。

 一方マイクロソフトのWindowsには,「信頼性が低い」「サポートが貧弱」といった印象が完全に定着してしまった。「継ぎ足しに継ぎ足しを重ねてきたWindowsのネットワーク・レイヤーは,いったん障害が発生すると手の施しようがない」と評するエンジニアは多い。

 インターネット・ビジネスの世界では,システム・ダウンはビジネス上の損害に直結するだけでなく,企業イメージに大きな傷をつける。インターネット・ビジネス用の大規模サーバーに,信頼性の面で課題を抱えるWindowsを適用することを,ユーザー企業がためらうのも無理はない(信頼性に関しては,サンも十全とはいえないのだが,それが表立って問題にされることはなぜか少ない)。

 もちろんマイクロソフトも事態は認識している。Datacenter Serverで,稼働率99.9%以上(年間ダウン8.76時間以下)の保証に踏み切ったことは,同社の危機感の表れだろう。マイクロソフトはDatacenter Serverは販売できるベンダーを絞った上で,認定ハードウエアとのセット販売や,障害対策のサポート契約の締結をベンダーに義務付けた。「Datacenterプログラム」と呼ぶもので,これにより稼働率99.9%以上の実現を目指す。

 こうしたマイクロソフトの取り組みが功を奏するかどうかはわからない。ベンダー各社との連携体制がきちんと機能する保証はないうえに,一度失った信頼は並大抵の努力では取り戻せないからだ。

 マイクロソフトとDatacenter Serverで提携したベンダーの多くも,内心さめている。日本のDatacenter Serverの発表会では,各社の幹部が壇上に上がり,Datacenter Serverにエールを送ったが,「ハイエンドでは当面,UNIXを推す」というのが,各社の本音だろう。

 もし,Datacenter Serverが2年前に登場していたら,状況はどうなっていただろうか--。別にマイクロソフトの肩をもつわけではないが,長年同社の動向をウオッチしていた記者としては,こうした感想をどうしても抱いてしまう。

 別にWindows 2000ベースでなくてもよかった。破竹の勢いで中小規模のサーバー市場を押さえつつあった当時のNT4.0に,Datacenter Serverと同じ障害対策サポートを組み合わせて提供し,稼働率を公式に保証していれば,ユーザー企業はこぞって飛びついたのではないだろうか。もちろん,トラブルは多発しただろう。だが,発生した障害を一つひとつ解決していく過程で,マイクロソフトもベンダーも鍛えられ,今ごろはユーザー企業の信頼を勝ち得ていたはずだ。

 実は,日本国内に限って言えば,マイクロソフトは障害対策のサポート契約を1998年から提供していた。NEC,富士通,日立製作所など有力ベンダーのエンジニアがそれぞれマイクロソフト社内に常駐し,マイクロソフトのエンジニアと共同でNT4.0の障害対策に当たってきた。だが,こうした取り組みはあくまでも日本独自のもので,マイクロソフトの全社戦略のなかできちんと位置付けされていなかった。このことは,ベンダー各社のエンジニアは,「開発用」という名目でなければ,Windowsのソース・コードを閲覧できなかったことに如実に表れている。

 こうした意味で,大規模サーバー市場におけるマイクロソフトの現在の劣勢は,戦略ミスが招いたものである。マイクロソフトは失った2年間を取り戻すために,これから何年にも渡って苦闘しつづけることになるだろう。

(星野 友彦=日経コンピュータ副編集長兼編集委員)