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 IT業界の変化のスピードが一段と加速している。現在の主流はeビジネスとCRM(Customer Relationship Management)だが,eビジネスは大枠として残るにしてもCRMにはそろそろ秋風が立ち始めた。

 CRMの次に来る候補の一つがここで紹介する「EIP(Enterprise Information Portal)」である。ひとことで言ってしまえば,企業内に存在するさまざまな情報リソースに,WWWブラウザを使って手軽に,しかも各部署に合わせたポータル画面からアクセスできるようにする仕組みである。加えて利用者は企業内に限定せず,企業間にも広げる。

 これによって企業間取引の多い企業の協力関係を円滑にする狙いがある。しかも提供する情報は相手に合わせて選定する(ただし制限しているとは見えないように)。例えば経営トップがアクセスできる情報と社外の代理店に公開する情報を,一つのシステムで統合管理するイメージになる。

「情報系はビジネス・インテリジェンスで完成」はちょっと早計

 EIPのプロダクトを提供するベンダーはまだ少ない。最も完成度が高いのは米Viadorの「E-Portal Suite」。米Epicentricと米Plumtreeはデータ分析機能を除くポータル製品を販売している。国内では日本アイ・ビー・エムや富士通,日本オラクルなどが,それぞれ情報系システム製品ラインの一環として開発を進めている。

 EIPはシステム的には情報系の流れに属する。基幹系から定期的にデータを吸い上げ,長時間保存してマーケティング戦略や経営戦略の策定を担うのが情報系である。情報系はここ5年で格段に充実し,データ・ウエアハウスを中心にデータマート,OLAPサーバー(多次元データベース),OLAPクライアント,データ・マイニング・ツールなどが体系的に整備されてきた。これらの戦略案にかかわるソフトウエア群を駆使する手法をビジネス・インテリジェンス(BI)と呼ぶ。

 イントラネットの普及につれて,BIツールはWWWベースで使えるまでに進化した。米Hyperion,加Cognos,仏Business Objects,米Brio Technologiesなど,BIのフロントエンドを担うベンダーも,これで一段落と自信を深めていることだろう。

 ところが現実はそれほど甘くはない。企業内には基幹系にも情報系にも属さないパソコン・ベースのデータ・サーバーが増殖を続け,そのなかには種々雑多ではあるが重要な情報が数多く保存されていたのである。これは従来のBIでは対処できない。そこで基幹系,情報系を含むこれら全体を一望するナレッジ・マネジメント的な新しい枠組みが求められている。ここで先陣を切ったのがViador社を始めとするEIPベンターというわけだ。

 したがってEIPには,ERPやRDBMS,データ・ウエアハウス,OLAPサーバーなどの従来の情報リソースに加えて,ExcelやWord,テキストなどのパソコン系データ・ファイル,グループウエアの文書ファイル,HTML,XML,PDFなどのWWW系文書ファイルへのアクセス手段が求められる。全サーバーを対象にする情報検索や,データ・ウエアハウスをベースにするデータ分析,分析結果レポートの配布,これらの作業を利用部門に合わせたWWWポータル画面から可能にする。

 世界最大級のオンライン資産運用会社である米Charles Schwabでは,Viador社のE-Portal Suiteを利用して,300社を越えるファンド販売会社のファンド・マネジャーに,投資信託会社の日次のファンド売上データをエクストラネット経由で提供している。

 Charles Schwab社のようなインターネット上の協業を軸とするビジネス・スタイルは,コスト削減とスピードという面で今後増加すると見られる。EIPは協業の枠組みを提供をして,これらのビジネスを支援する。ただし利用する企業のポリシーも試される。セキュリティ管理に自信がなければ使いこなすことはできない。

(高千穂 彰=技術研究部主任研究員)

■日経マーケット・アクセス(http://ma.nikkeibp.co.jp/MA/)誌のビジネス・モデル欄より。