Intelが危ない
業績が悪いわけではない。1998年の決算は,前年比13%の減益になったとはいえ,12年連続の増益だ。この2月23~25日に開いたIntel Developer Forum(IDF)では多数の開発者や報道陣が集まり,IT(情報技術)業界の盟主らしいところを見せつけた。
しかし最近のIntel社はどうも動きが鈍い。大切なときに,一拍ほどタイミングが ズレることが少なくない。組織が巨大化してベンチャー精神が薄れるとともに,「守り」に入り始めた感がある。 たとえばインターネットへの取り組み。IDFの基調講演でPaul Otellini執行社長が「インターネットはIntel社の未来の基盤でもある」と言い切ったものの,インター ネットを始めとするネットワーキングの時代にIntel社がどのように関わっていくの か,明確になっているとは言いづらい。
低価格パソコンの流れを見誤る
低価格パソコン市場への参入もそうだ。明らかにタイミングを逸した。Intel社は1998年春,1000ドル以下のパソコン向けにCeleronプロセサを投入したが,パソコンの低価格化への流れが顕著になって1年ほど経ってからだ。Intel社会長のAndrew Grove会長が好んで使う「Strategic Inflection Point(戦略的転換点)」を見誤った。
しかも投入したのが,2次キャッシュを内蔵しないCeleron(開発コード名:Coving ton)。売れ筋のPentium IIへの配慮を優先した中途半端な仕様のチップは,「低価格パソコン市場に腰が引けているIntel」という印象を与える結果となった。案の定 ,米AMD(Advanced Micro Devices)や米Cyrix(米National Semiconductor社の一部 門)の台頭を食い止められず,一般消費者向けのパソコン市場でのシェアをズルズルと落としていった。
米PC Dataが調査した99年1月の米国小売店での販売実績では,AMDのx86搭載機のシェアが43.9%と,Intel製のチップを使ったマシンの40.3%を上回った。1000ドル・パソコンの市場にいたっては,AMD社の50%に比べて25.4%と大きく水を空けられている 。むしろCyrix社(シェア24%)に後ろから猛烈に追い上げられ,2位の座さえ脅かさ れている状況だ。
「米国小売店の販売台数は米国市場全体の25%,世界市場の9%」(インテルの傳田信行社長)と余裕をみせるが,1000ドル以下のパソコンが米国の全デスクトップ機の65%を占めるまでになった動きが,小売店以外さらには米国以外に波及しない保証はどこにもない。
Intel社も,動作周波数の高いCeleronを前倒しで市場に投入するなど立て直しに動き出してはいる。たとえばデスクトップ・パソコン向けマイクロプロセサ事業を統括するPatrick Gelsinger副社長は,「昨年までの販売戦略は間違っていた。今年は方針を変える」と全世界のマーケティング担当者に向けて檄を飛ばした。しかし1年ほど前のCeleron投入時にも,Intel社幹部は「低価格パソコンの波を甘くみた」との反省の弁を語ったはず。どうも,歯車がかみ合わない。
創設者Gordon Moore名誉会長の心配が現実に
こうした状況をみるにつけ思い出す言葉がある。Intel社の創業者の一人であるGordon Moore名誉会長(当時は会長)が数年前の絶頂期に,インタビューでふと漏らした言葉だ。「品種が多すぎるかな? と感じるときがある」。
巨大化しすぎたIntel社に対する生みの親の心配が,現実のものとなってきたようだ。
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