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 「ソフト部品ビジネス」の立ち上げでは,米国よりも日本が先行するかもしれない。Javaによるソフト部品である「EJB(Enterprise JavaBeans)コンポーネント」の活用へ向けて,国内有力システム・ベンダーらが動き始めたからだ。

 最初の動きは,この9月20日に開かれた発表会である。内容は,大手メーカーの富士通と日本アイ・ビー・エム(日本IBM),Java関連のSI(システム・インテグレーション)を手がけるイーシー・ワン,エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションウェア(NTTコムウェア),川鉄情報システム,日立ソフトウェアエンジニアリング(日立ソフト)の6社が発起人となり,EJBコンポーネントの可搬性向上を狙った共通規約を定めるコンソーシアム(名称未定)を設立する,というものだ。

 第2の動きは,9月25日に設立発表があったEJB流通の新会社(名称未定)である。住商エレクトロニクス,日立ソフト,日本総研らが出資して,年内にも設立する。「2003年には,EJBコンポーネントの日本国内の流通市場は150億円規模に成長するだろう。新会社ではその20%を取りたい。つまり2003年には年商30億円を見込む」と,新会社設立の準備を進めている住商エレクトロニクスの栗林亘氏(eソリューション事業部 eS第1部)は話す。新会社は,ソフト部品流通のために,先に設立発表したコンソーシアムの成果を利用する予定だ。

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 EJBはまだ新しい技術である。EJB仕様の第1版が公開されたのは1998年3月だから,それから2年半しか経っていない。だが,今や主要なWWWアプリケーション・サーバー製品の大半がEJB実行機能を備えるに至った。日本国内では,EJB技術を活用したシステム構築事例が,続々と登場している。「米国のコンポーネント流通会社などを視察した感触では,日本のEJB利用は,世界的に見ても進んでいるのではないか」(イーシー・ワン副社長COOの最首英裕氏)との意見があるほどだ。

 とはいえ,疑問を抱く方も多いだろう。ソフト再利用へ向けた試みは,過去何回も失敗してきた。各ベンダーの戦略と標準規格という考え方は,なかなか相容れないものだったではないか・・・と。

 むろん,EJBに限らず「この技術さえ使えばすべて解決する」といった夢のような話がある訳がない。だが筆者としては,今回の試みには注目すべき点が多いと考えている。

 まず,EJB仕様に基づくソフト部品の互換性はもともと高い。日立ソフトは,実際にEJBを活用したアプリケーションを,異なるWWWアプリケーション・サーバーに移植する試みを行っている。サーバー製品ごとに独自実装の部分があるため互換性は100%ではなかったものの,90%前後ときわめて高い互換性が得られている。

 コンソーシアムでは,「EJBは,点を付ければ90点くらいの技術。そこに付け加えるべきノウハウを整備して,共有していく」(富士通)という立場を取る。EJB仕様そのものをいじる訳ではなく,その利用ノウハウを標準化して共有することで,ソフト部品ビジネスへの道を開こうとするものだ。

 さらに疑い深い人は,こうも思うだろう。ライバル関係にあるベンダーがコンソーシアムを作っても,本当の標準化などできた試しがないではないか,と・・・。

 むろん参加メンバーのなかで,部品ビジネスの現場でライバル同士になる例は多々出てくるだろう。だが,ソフト部品を作って売るには,部品の規格が定まっていることが大前提だ。その肝心の規格を1社だけが作っても仕方がない。だから,ビジネスでは競合するライバルが規格作りで手を組むことは,不自然ではない。あるメンバーは,このコンソーシアムを「大人の集まり」と評した。ビジネスでは競合関係にあっても,手を組める部分では手を組む,ということらしい。

 9月20日のコンソーシアムの発表会では,長年にわたり競合関係にあった富士通と日本IBMのトップが仲良く並んで出席したことが注目を浴びた。

 富士通の秋草直之社長は,「ハードウエアはドッグイヤーと言われるが,ソフトウエア開発の現場は遅々として進まない。ソフト部品化の動きは,今度は本物だ。日本IBMと共同で発表に臨めることをうれしく思う」と挨拶。日本IBMの大歳卓麻社長は,「富士通とは共通の認識をもっている。ソフトウエア開発の生産性は,ひいては国全体の競争力に影響する」とぶちあげた。ソフト部品の流通が本格化すれば,実際にソフト開発の生産性は高まる。その点では手を組める余地はあるのだ。

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 コンソーシアムの設立総会は,本コラム掲載日の翌日,10月6日に開かれる。その最初の成果物となるドキュメントは,年内にも一般公開する予定だ。大規模なWWWベース・システムの構築に携わる技術者にとって,その動きは要チェックである。

(星 暁雄 =日経Javaレビュー編集長)