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 有線音楽放送大手の有線ブロードネットワークス(usen,本社:東京都千代田区)と同社子会社で第一種電気通信事業者のユーズコミュニケーションズは,光ファイバによる大容量・常時接続型のインターネット接続サービスの実験「GATE01」を先ごろ開始した。実験は東京都世田谷区の約500世帯を対象に,2001年3月末まで実施する。2001年4月の商用サービス開始に向けて,高速IP通信サービスの効果を実証し,有効なコンテンツ・サービスを見極める狙いである。

 実験では,FTTH(Fiber To The Home)の形態でアクセス速度が毎秒100Mビットのインターネット接続サービスなどを家庭のパソコン向けに提供している。さらに自社の通信センターにVOD(ビデオ・オン・デマンド)サーバーなどを設置して,映画などの大容量コンテンツを家庭のパソコンでストレスなく視聴できるサービスを実現した。VODでは伝送速度が毎秒4Mビットの「MPEG-2」映像を配信するため,「現在のテレビの画質と比べても見劣りしないものになった」という。もちろん,視聴する番組の早送りや巻き戻し,一時停止などもできる。

 usenが目指しているのは,こうしたパソコン向けのサービスの提供だけではない。実験ではMPEG-2デコーダーやLANボード(100/10BASE-T)を搭載したパソコンをモニター家庭に貸与する形でサービスを提供しているが,usenは2001年4月の商用サービス開始までに,新たにテレビ受像機と接続して利用するSTB(セットトップ・ボックス)を開発・提供する方針だ。FTTHによるVODサービスなどを,家庭のテレビでも利用できるようにする。usenが最終的に狙うのは,こうしたテレビなど家電製品向けのサービスである。

 将来的なVOD用コンテンツの確保などをにらみusenは,ブロードバンド(高速・広帯域)サービスの実現を目指す実験参加企業を募って「usenブロードバンドコンソーシアム」も立ち上げた。コンソーシアムにはすでに,ソニー・ミュージックエンタテインメントをはじめ,アニマックスブロードキャスト・ジャパン,インベステーション,エフエム東京,カミングスーン・ティービー,ギャガ・コミュニケーションズ,ポニーキャニオンなど映像・音楽業界の有力企業が名を連ねている。

 usenは,「毎秒4Mビット以上の伝送速度を確保することで,音楽や映像などコンテンツの形態を問わずに,オン・デマンドでサービスを提供できるようになる。またEthernetインタフェース(100/10BASE-T)があれば,利用する端末の種類も問わない。テレビやラジオ,ビデオデッキなど様々な家電製品が対象になり得る」という。こうした多様なネットワーク対応製品の開発に当たっては家電メーカーとの連携がポイントになるが,「usenとしては,まずFTTHによるネットワーク事業で実績を作り,その後で有力メーカーとの交渉を本格化させたい」としている。

 FTTH用の光ファイバ網は,既存の有線音楽放送用同軸ネットワークの経路に沿って今後3年間で構築し,最終的には全国の約8割の世帯を対象に高速アクセス・サービスを提供可能にする計画だ。光ファイバ網構築に当たっては,LANスイッチなど市販製品の採用によって設備コストを抑え,家庭向けの毎秒10Mビットのサービスの場合でも利用料金を月額数千円台(インターネット利用料込み)に抑える意向である。

 その上でusenは,「わが社の一番の強みは,有線音楽放送やカラオケ・システムの販売などで培った営業力。サービスが提供可能になったエリアでは,訪問販売を含めてすべての潜在ユーザーに営業をかけて,ネットワークの利用率を上げ,事業の早期黒字化を図る」という。

 usenがテレビ受像機など家電向けサービスに力を入れる理由もここにありそうだ。提供エリア内での「ローラー営業」を通じてネットワークの利用率を上げようにも,家庭への普及途上にあるパソコン向けのサービスだけでは売り込みにくい。家庭の大半が保有するテレビ受像機向けのVODサービスなどが,どうしても必要になるというわけだ。

 こうしてusenは,パソコンだけでなく家電までを対象に,ブロードバンド・サービスの展開を目指す。その事業の成否は未知数だが,いずれにしてもusenが今後の日本のブロードバンド市場における台風の目になることは間違いなさそうだ。

(渡辺 博則=日経ニューメディア副編集長)