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 この10月31日と11月1日の2日間にわたり東京ファッションタウン(東京江東区)で,Linuxのビジネス活用に焦点をあてた展示会「Linux World Conference & Demo/Tokyo 2000」(IDGジャパン主催)が開催された。Linux World Conferenceは,Linux関連の展示会のなかでは最もビジネス色が強く,企業システムでLinuxを活用しようとする人たちが多く参加するイベントである。

 今回の展示会で印象的だったのは,大手コンピュータ・メーカーのLinuxへの入れ込みようだ。特に日本アイ・ビー・エム(IBM),NEC,富士通,日立製作所,東芝といった大手が,当り前のようにLinuxのイベントに軒を連ねているのが印象的だった。

 ちなみに今回のイベントに先立ち,東芝は10月25日にSI(システム・インテグレーション)事業でLinuxをサポート対象にすることを発表した。さらに翌26日には,富士通と日本ヒューレット・パッカードがLinux対応を表明した。

 こうした大手コンピュータ・メーカーで,いち早くLinux対応を明らかにしたのが日本IBMである。日本IBMは2000年5月17日に,全サーバーでLinuxに対応すると発表した。この発表は,その他のコンピュータ・メーカーやSI企業に大きな影響を及ぼした。

 たとえば大塚商会などのSI企業で,Linuxの認定資格を技術者に取得させる動きが活発になったのは,日本IBMの発表がキッカケとなっている。ここでいう資格としてはRHCE(Red Hat Certified Engineer)やTurbo-CE(TurboLinux Certified Engineer)が挙げられる。

 コンピュータ・メーカーも日本IBMの後を追った。日立製作所が9月7日に,国産メーカーとして初めてIBMと同様に全サーバーでLinuxに対応することを表明した。東芝や富士通などの動きは前述の通りである。NECもLinux対応を進めている。同社がLinuxサポートセンターを開設したのは1999年11月のこと。その後,IA-64 Linuxプロジェクトに参加したり,Linuxの大規模システムへの対応を支援するOSDL(Open Source Development Lab)の発起人となるなど,活発な動きをみせている。

 では,なぜビジネスにLinuxなのだろうか。

 これまでLinuxは,個人の趣味や興味の対象として扱われることが少なくなかった。あるいは仕事でUNIXを使っている人が,家のパソコンにはLinuxを組み込むといった使われ方が多かった。

 1998年末ごろからは無償で利用できるOSとしてLinuxに注目が集まり,一種のブームを巻き起こした。パソコン雑誌は毎号のようにLinuxを取り上げた。さらには,一般向けの週刊誌でも扱われるようになった。しかしこうしたブームは長続きせず,最近ではLinuxブームは去ったかのように思える。ブームが去ったこの時期に,コンピュータ・メーカーのLinux対応が本格化しているのはなぜだろうか。

 Linuxブームを振り返ると,Linuxの機能・性能よりも,その開発形態の斬新さが注目された側面が強い。無償で使えるだけでなく,ソース・コードを自由に改変できることや,ボランティア・ベースで開発が行われており特定ベンダーに依存しないことなどが,米MicrosoftのWindowsとの対比で注目された。こうした観点だけでLinuxをとらえるのなら,一時の熱気が冷めればLinuxに対する興味が薄れるのは当然だろう。

 ここで改めてLinuxの機能面での特徴を思い起こして欲しい。Linuxの特徴は,ネットワーク環境との親和性が高く,特にインターネットにつながったサーバー用途に向くことだ。このため,サーバー機の拡販ではLinuxに対応する意義は大きい。ブームをキッカケにしてLinuxに注目した各メーカーが,サーバー用途での利用価値を認め,着々と対応を進めてきた結果が,相次ぐサポート表明となって表れたといえる。

 各メーカーがLinux対応を表明する場合,以下の三つの要素が不可欠である。(1)ハードウエアのLinux対応,(2)ソフトウエアのLinuxへの移植,(3)サポート体制の確立,である。ここにきてLinuxをサポートする体制が整い,各メーカーが本腰を入れてLinuxを使ったシステム構築に乗り出したわけだ。

 Linuxのブームが去った。しかし,Linuxが消え去ったわけではない。Linuxの活躍の場が変わったのだ。今後,着実に企業システムでのLinuxの利用が広がる。これだけは確かだろう。

(寺田 大助=日経Linux編集)