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 前回,「今すぐ欲しいブロードバンド・ネットワーク」と題して,日ごろの焦燥感をぶちまけた原稿を書いたところ,いろいろな方からたくさん応援メールをいただいた。

 要は日常的な仕事をこなすためだけに,自宅と会社のあいだで10Mbpsの回線が今すぐにでも欲しいとの願いを書いたのだ。ビデオ映像の配信や音楽配信目的ではなく,ごく普通のビジネス用途に速い回線が欲しいと。

 なかには,「光ファイバーの実験を開始するから,どうぞ」とか,「無線ネットワークのサービスもありますよ」という素晴らしく建設的なメールまでいただいた! 本当にありがとうございます。

 しかし,それからが問題だ。乗り越えられない巨大な壁が,またまた私の前に立ちはだかってしまった。「実験は長野県で・・・」「大分もいいですよ」「世田谷区の赤堤にどうぞ」。うわー,そんなこと言われたってムリでしょ。

 自宅に「フレッツ・ISDN」がやって来るまでにずいぶん待たされたが,ブロードバンドにはもっと深刻な壁がある。

 サービスは,どこでも誰でもあまねく提供されるものではないのはよく分かっている。しかし,基本的に需要の多いところ,工事がしやすいところだけが対象になり,いくら念じてもやって来ないところは,いつまでも待たされることが大きな悩みだ。SOHOで一人でITビジネスを立ち上げたいという人が,都会から離れた静かなところでと考えたときに,ブチ当たる厚い壁がこういったサービス提供の状況だ。

 「孟母三遷」という言葉がある。孟子の母が,孟子の教育のためによりよい環境を得ようと,住居を3度遷り(うつり)住んだという故事から生まれたものだ。これから私たちは,「孟母」にならって,より良い通信環境を求めて住居を代える覚悟が必要かもしれない。ネットに依存したビジネスを,快適に進めようと思ったら,選択肢はそれしかないように思えてくる。

 うかうかしていると,米国にあるいはシンガポールへと三遷しなければならない事態が起きるかもしれない。日本がそんな情けない事態にだけはなってほしくないと切に思う。

(林 伸夫=パソコン局主席編集委員)