貿易・商業の街,香港。製造業が20%に達しないこの都市でも,インターネット関連ビジネスが盛んになっている。

 インターネット・ビジネスは先進国と発展途上地域の差,もの作り地域とそうでない地域の差が,さほど大きくないビジネス形態だ。世界同時スタートに近い状態で始まったビジネスともいえる。

 このインターネットの世界で,日本は必ずしも“進んだ”とはいえない状態にある。たとえば,インターネット1人当たりの利用率。日本は先進アジアの諸地域である香港やシンガポール,韓国,台湾よりも低く,平たくいえば遅れた国となっている。

 こうしたなか日本政府も,IT革命で5年後には世界のトップに躍り出ると発表したが,これに最も敏感に反応しているのがアジア諸地域である。「日本は世界第2位の経済大国には違いないがインターネットでは遅れた国」との認識が,アジアの国や地域にはある。このため,日本の巻き返しの姿勢に脅威を感じるわけだ。

 ではアジアのインターネット事情はどうなっているのだろうか。以下では,筆者が日ごろ接している香港を例にとって紹介したい(注)。それこそ百花繚乱の米国のインターネット事情に比べれば,香港のビジネスは“ささやか”かもしれない。だが,そこには自らのコア・コンピタンスを意識した,いかにも香港ならではのインターネット戦略が垣間見える。

 香港のインターネット・ビジネスは,香港らしさが実によく出ている。では香港の特徴とは何だろうか。読者の皆さまもご存知のように,貿易商社機能であり,金融であり,ジャッキー・チェン氏に代表される映画などのエンターテインメントである。

 たとえば貿易商社機能。西洋と中国を結びつけるシルクロードから命名した「E-silkroad.net Holdings社」という貿易商社がある。この商社は,インターネットを利用して貿易を行うwww.expo24hrs.net社を傘下に抱える。この子会社で実世界で培った商社としてのノウハウを,インターネットという世界で生かしている。

 このネット貿易商社は,オンラインでの展示会を昼夜を問わず24時間営業で開催している。製品のディーラーとメーカーとをネットで引き合わせるのが目的だ。展示会が対象とするのは,おもちゃ,エレクトロニクス製品,被服ファッション,コンピュータ関係,宝石,革製品,ギフト,家庭用品の8分野。いずれも香港が得意とする分野である。

 各分野のメーカー企業は会費を支払い,出展する。同社は,検索されて出てくる出展者リストが表示される順番を,毎回入れ替えるような検索エンジン「STORM」を開発した。各分野の出展企業は,最初の訪問者がアクセスするとA社,B社,C社,D社,E社が出てくるが,次の訪問者にはB社,C社,D社,E社,A社といった具合だ。出展者の露出度が公平になるように配慮している(出展者の会費は均一料金である)。

 「各分野の商品は消費者も見ることができるが,ビジネスとしてはあくまでも問屋,小売りなどに向けた企業間商取引」とwww.expo24hrs.net社CEOのトーマス・ホー氏は語る。

 アジアで評判の高い日本製品を売るサイトを運営する企業もある。Madeinjapan.com社は,日本の製品を香港および中国へ販売するためのオンライン・サプライ・チェーンを構築しようとしている。短納期をセールスポイントに売り込みを図る。香港にとって,日本は中国に次ぐ第2の取引市場であることから日本製品を選んだという。

 映画業界も,インターネットへの移行を進めている。たとえば,長年にわたって映画フィルム制作に携わってきたSalon Films社は,フィルムのデジタル化に注力する。デジタル・プロジェクタを使って映写する映画館を展開するほか,中国の北京や上海,広東などへの配給も行っている。中国への配給には,広帯域のCATVネットワークや衛星を使う。

 インターネット・ビジネスを手掛ける香港企業はこのところ次々に来日し,パートナー探しを精力的に行っている。“香港さしさ”を漂わす企業群に,ぴったりのパートナーは日本で見つかったのだろうか。

(津田 建二=Nikkei Electronics Asia担当部長)

注:筆者が属するNikkei Electronics Asia誌は,編集拠点を香港に置いている。