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 さまざまな場面では通常,「先行者利益」が得られるものだ。他に先んじて高性能製品を開発し,リーズナブルな価格で世に出せば顧客はついてくる。競合他社が追いついてくる間に次なる手を考え,また一歩先に行き,十分な利益を得る。これが世の常なのだが,最近どうも私の身まわりには“先行者不利益の法則”が取りついてしまっている。

引き出しに散乱するメモリー・カード

 新し物好きのパソコン・ユーザーなら,デジカメの2台や3台はお持ちだろう。かくいう私はすでに6台目。最初のカメラはたったの30万画素。それでも27万円もした。新品には手が出ないから友人に中古で譲ってもらったのだが,デジカメで「先行者不利益」を被ったのは実は価格だけではない。

 メモリー・カードも大いに筆者を悩ましてくれる。2代目のデジカメでは,メモリー素子の電圧仕様が初代と異なり,同じスマートメディア・カードでも使えなくなってしまった。さらに,3代目はメモリー自体がコンパクトフラッシュに,そしてまたスマートメディアに,最後はメモリースティック。もう散々だ。

 引き出しには,お役ごめんとなった半端なメモリー・カードが散乱する。メーカーの覇権争いに巻き込まれ,翻弄されるユーザーの一人が私だ。

ISDN終端装置がごろごろ

 お次は,ISDN接続のための終端装置「DSU」。我が家には何台もゴロゴロころがっている。DSUってなに? と言われそうだが,要するにISDNを宅内に引き込んで,宅内機器とつないで使うための変換器だ。最近のTAやISDNルーターには内蔵されているものが多いが,ISDNがサービスを開始したころは,毎月高額のレンタル使用料(1700円!!)を取られながら大事に使ったものだ。

 何年かレンタル料金を払い続けた後,ようやく買い取り制度が始まった。いつまでもレンタル料金を払い続けるのもシャクだからと買い取ったが,トータルで1台4万円はかかってしまった。それが2回線分だ。

 そして待ちに待ったADSLを導入したとたん,そのDSUはお払い箱となった。いまや玄関の重しになっている。大きさも今売られているDSU内蔵型ルーターと同程度の図体だから,カミさんからは早く捨てろと矢の催促が飛んでくる。注ぎ込んだ金も大金だが,家族に責められる精神的苦痛が何にもまして痛い。

11Mbps無線LANとBluetooth

 そんな傷ついた心をさらに重くしているのが,Bluetoothの台頭だ。

 1年前から私は,ノート・パソコンに11Mbpsの無線LANカード(IEEE 802.11HR DSSS 11Mbps, Wi-Fi認定)を差し込み,肌身離さず愛用している。ところがBluetoothは,私の無線LANと同じ周波数帯を使う。ぞろぞろ出てくるBluetoothを戦々恐々と眺めている今日この頃だ。

 今はまだ,視野内に入ってくるのはせいぜい数台。ほとんど影響を感じないが,そこら中にBluetoothが出没すると,電波の干渉できっと私の利用環境は悪化する。

 米国では大きなコンベンション・ホール,空港の待合室,スターバックスの店内などに802.11b準拠のベース・ステーションが設置され始めていて,Bluetoothベースの極小地域ネットへの移行はなさそうだが,802.11bの地域展開が進んでいない日本では行方が見えない。

 しかし,ようやく最近になってIEEE 802.11bとBluetoothの共存を図る技術提案が採択され(発表資料),私の心配は杞憂に終わる可能性も出てきて,大変めでたい。

 すべての世代交代や技術革新が,「共存するIEEE 802.11bとBluetooth」のような動きになってくれればユーザーとしてこれほど幸せなことはない。形状だけ変えて,マーケティング力だけで新しい市場を切り開くような,顧客無視の展開は是非とも避けてほしいと願う。

(林 伸夫=パソコン局主席編集委員)