eビジネスのブームが一段落し,今,見直しの段階にきている。当初,期待されたのはBtoC(企業消費者間)。それが壁に突き当たると,「市場が大きいのはBtoB(企業間)の方だ」というかけ声が聞こえてきた。そこでBtoBを進展させる仕掛けに入ったが,これも大半がうまく離陸できずに足踏み状態が続いている。
失敗の理由はいくつか挙げられる。その最大のものは,米国発のeビジネスモデルをそのまま日本に取り入れようとしたことにある,と筆者は考える。
例えばBtoCの場合,広大な米国では買い物が大変なので1週間分をまとめ買いするのが当たり前。さらに,クリスマス・シーズンに1年間に使う費用の半分をはたいて贈り物を購入する。
一方の日本は,ずいぶん状況が違う。狭い地域にスーパーやコンビニ,各種の小売店が乱立する。しかも,それぞれの業態にあった物流も完備しているので,買い物すること自体にあまり煩わしさを感じない。価格にしても安く設定されている。ギフトにしてもお「中元」「お歳暮」「バレンタイン」など結構イベントは多く,一時期に集中することはない。
確かに,そこでしか売っていないものがあるなら,インターネットを使うだろう。しかし,そうでない商品の場合,値段が安いからというだけでインターネットで買うという行動には,なかなかつながらない。直接見て,手に取って買えるなら,その方がよい,ということになる。また物流費が個別対応だと高くつくので,インターネットの方が安く商品を販売できるとは限らない。
では,書籍やギフト商品の販売で約3000億円もの年商を達成(まだ膨大な赤字を出してはいるが)した米Amazon.comのような事例が日本で出てくるだろうか。筆者は,他チャネルとの競合優位性から考えて,どうも不可能に近いと考えている。
しからば,BtoCは日本では意味がないのか。けっして,そんなことはない。
付加価値が高くてユニークな商品やサービスが提供でき,規模の拡大よりも着実な利益確保を重視する戦略なら,ビジネスが成功する可能性は高い。ただしその場合でも,短期に立ち上がることに固執せずに,インターネットによる口コミ(バイラルマーケティングと呼ばれる)戦略などを活用して,じっくりと時間をかけて取り組むことが重要と考える。
また,インターネットによるBtoC販売単独ではなく,トータルで採算を考えるべきだ。たとえば,他チャネルとの相乗効果によって(マルチチャネル戦略とかクリック&モルタル戦略などと呼ばれる)顧客満足度を高め,よりよい関係を築くのにインターネットを活用する。さらには,貴重なマーケティング情報を直接的に得ることができるという,インターネットならではのメリットに注目すべきである。
日本の多くのメーカーは卸,小売りを経由して製品を販売しているので,最終ユーザーの声を直接聞くことがなかなかできない。たとえば,インターネットによる直接販売で情報を収集したり,こだわりをもつ顧客を集めたコミュニティを形成したらいかがだろうか。これらからの情報を商品開発にフィードバックすることを考えていけば,実質的にBtoCの世界は日本のビジネスに馴染み,戦略的な働きをすることは間違いない。
(上村 孝樹=コンピュータ局主席編集委員)