規模,種類を問わず,24時間365日オンライン稼働を求められるシステムが増えている。インターネットやグローバル化による海外との取引の拡大などにより,ベンチャーや中堅企業にも夜中も止められないシステムが必要になってきた。コスト抑制と24時間365日稼働---取材で見たSEたちは,この相反する課題を解決するために奮闘していた。

 24時間365日稼働を求めるシステムの代表的な例に,インターネットでサービスを提供するサイトがある。これらのサイトは,24時間365日,即座にサービスが利用できることを“売り”にしている。システムがダウンすれば「すぐに電話が鳴る。不満を訴えるメールもくる」(インターネットで心理カウンセリング・サービスを提供するサイトPeaceMind.comを運営しているケイツーコーポレーション 代表取締役社長の荻原国啓氏)状況だ。

 社内に閉じたシステムでも,グローバル化の進展に合わせるため24時間365日稼働に踏み切った事例もある。あるメーカーでは,システムのオンライン受付時間を平日の9時~17時から24時間に変更した。時差があり,祝日も日本とは異なる海外拠点から,在庫照会や発注などのオンライン処理を受け付けるためだ。

厳しいコストの制約

 世の中の流れから見れば,当然の要求と思える。しかし,システムを構築する立場にあるSEに与えるインパクトは大きい。難しさは,これらのシステムが要求する24時間365日稼働が,従来と異なることにある。

 サーバーの冗長化,分散化,クラスタリング・ソフト,3交代制による24時間の監視など,このような24時間365日稼働を実現する手段は従来から存在している。従来の主なユーザーは,数秒のダウンが大損害に直結する金融や通信業界の企業だった。彼らは,システム・ダウンによる損害から自らを守るために,数千万円規模の費用を投入してこれらの対策を講じ,24時間365日稼働を実現してきた。

 ところが,今や24時間365日稼働を求めるのは彼らだけではない。ビジネスの規模が小さければ,投入できるコストは乏しくなる。そもそもシステムの重要度が低く,ダウンしたときの損害額がそれほど大きくなければ,数分のダウン・タイムを許容できる場合もあるだろう。

 ここで浮かび上がってくるのが,“比較的ゆるい許容ダウン・タイムだが,低コストで,24時間365日稼働を実現したい”という新しいシステム像である。

変わらない考え方,変わった技術

 筆者は,このような事情を抱える企業を取材し,そこから見えてきたシステム・ダウンの原因と対策を探り,記事にまとめた(*)。取材を通して得たポイントは大きく二つ。一つは,技術や製品は激しく変わっているということ。そしてもう一つは,基本となる考え方は変わらないということだ。

 前者としては,システム・ダウン対策に用いることができる手段が多様化してきたことが挙げられる。例えば,インターネット接続回線,電源,空調などを多重化した施設を提供するインターネット・データ・センター(iDC)によるハウジングや,WWWサーバーなどへのリクエストを複数のサーバーに自動的に振り分ける負荷分散装置の利用などがある。

 いずれも今年に入って低価格化が進み,利用しやすくなってきた。例えば負荷分散装置は,これまで中心価格帯が200万円前後だったのが,2001年に入って100万円を切る製品が現れ始めた。同じ予算でできるダウン対策が,半年前とは全く異なっているのである。

 一方の変わらないシステム・ダウン対策の考え方とは,システム・ダウンに至る原因を理解し,そのすべてに対策を施す---である。ハードウエアの故障やソフトウエアのエラーのみならず,アクセス集中による過負荷,温度や電源などのサーバーの動作環境が,システム・ダウンの原因となりうる。取材したなかでも,実際に空調が故障したためにサーバーがダウンした例や,メモリーが故障したためにデータベースの内容が破壊され,再インストールを余儀なくされた例もあった。

 このような,普遍の対策を実現するために,激しく変わる技術や製品を適用していく。それこそが,SEにとって腕の見せ所でもある。実際,システムを構築したSEたちは,利用できる工夫を折り込みつつ,最適なシステムを構築していた。

 バックアップ機にはサーバー機ではなくワークステーションを採用したり,リアルタイムのデータ・バックアップに無償のファイル転送ユーティリティ「rsync」を利用したり,一つひとつは小さな工夫だが,積み重ねていくことで,大きな成果につなげていた。要求される許容ダウン・タイムの実現とコストの削減という相反した要素と戦いながら,その着目点と判断を満足げに語っていたSEたち---今更ながら,システム構築とは面白い仕事だ。

(矢崎 茂明=日経オープンシステム)

* 日経オープンシステム,2001年10月号の特集「24時間365日稼働を実現する」。目次はWebサイトでご覧頂けます。