マクロでとらえた「×××時代」というものを,何年から何年までと特定できるものではない。しかし,あえて強引に括れば,今はさしずめ「ネットワークの時代」,あるいはハードやソフトなどの製品販売よりサービスで収益を稼ぐ「サービスの時代」と言えるのだろう。

 米IBM社が全方位,つまり360度のパノラマ利用ができるシステム/360というメインフレームを発売した1965年から,パソコンが発売され始めた1980年までを「メインフレーム中心時代」とくくれる。そして,ネットワーク言語Javaやネットワーク・コンピュータ,ネットワーク中心コンピューティング,TCO(Total Cost of Ownership)など,「パソコンやクライアント/サーバー全盛時代」に,ネットワークでの新たな利用形態が一挙に提唱されたのが1995年だった。ならば1981年~1995年は「パソコン中心時代」と言える。

 二つの時代が約15年スパンできたわけだから,今のネットワークやサービス中心の時代は2010年ごろまで続くのだろう。米IDC社の統計資料によれば,メインフレーム時代最後の1980年のIT市場規模は500億ドルで,業界はそれまでの15年間,年率15%で伸びてきた。パソコン時代最後の1995年の業界規模は5500億ドル。業界は同じく年率17%で成長を遂げた。予測によると,2010年は5兆ドルとされるため,第3世代のIT業界は年率16%成長ということになる。

いずれの世代もリセッションを経験して飛躍

 そして,いずれの世代でも期間中に大きなリセッションを一度経験し,それに対処する知恵や新戦略が新たなビジネス・モデルを作り需要を掘り起こしてきた。1974年~1976年のコンピューター停滞期に業界は「IBMメインフレーム互換ビジネス」という新市場を創出。IBM社はそれに対し,価格性能比が従来機の4倍の303Xを開発。それまでの「メインフレームはさらに大きな機種に取り替える“リプレース需要”」を「交換せずに追加で設置する」新ビジネス・モデルを創出。需要を生み出した。

 第2世代中のリセッションは1986年~1987年。それに対し業界は,エンドユーザーの現場にリソースを置く分散処理,いわゆるクライアント/サーバーというダウンサイジング・モデルを提案。新需要を開拓した。さらに同時期にIBMは第3世代のビジネス・モデルとなったサービスに投資を始めた。

 現在,業界はまた大リセッションに見舞われている。今回はIT業界にベンチャー資金という金融業界が大いに口を出したのが,前の2世代と違う大きな特徴。テクノロジーというエンジンにガソリン(融資)がばらまかれ,起業家は「技術への情熱」から「富への情熱」に心を奪われた。ITテクノロジーが株式市場の状況やGDP成長予想に左右され,IT業界が経済の変動と同期するようになった。その結果,ある著名アナリストの「ネット・ビジネスは儲かっていない」の告発レポートが引き金で融資が引き上げられ,瞬く間に不況がIT業界全体を覆い尽くしてしまった。

 しかし,業界には既に第4世代のコンピューティングをにらみ第3世代の後半に向けた新ビジネス・モデルも登場し,受け入れられ始めている。ASP(Application Service Provider)やeソーシングなどのユーティリティ・ベースのものだ。ユーザーはサービス業者のマシンを使い,データ・センターからアプリケーションをホストしてもらい,使った分の料金を支払うというモデル。ユーザー企業はもはやハードやソフトという技術にお金を払いたがってはいない。それらがもたらす結果の品質や価値にお金を払うのである。

 品質や価値というのはまさにコンテンツであり,第4世代コンピューティングはコンテンツ中心の時代となるだろう。翻ると今,コンテンツはネットで無料配布されている。米Microsoft社はネットとコンテンツを結びつけた有料ベースの.NETサービス・モデルの実験を開始する。知識や経験,品質,そしてメディアの類(たぐい)のコンテンツをサービスに変えて,いつでもどこからでも有償で利用できるビジネス・モデルの創出を狙っている。成功すれば,それが第4世代の標準モデルとなるだろう。

(北川 賢一=日経システムプロバイダ主席編集委員)